降谷サン？邪魔しないでください。【降谷零／安室透】

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『じゃあ、高木っち。家までお願いしますね』





そういった途端、助手席のドアが勢いよく開いた。


え？可笑しくない？


高木っちの車をタクシー代わりにしようとしたのは謝るよ？


でも私の後ろ走ってなかったのに着いてものの数秒で、降谷走って来れたの可笑しくない？








『ねぇ、高木っち。この人って人間だと思う？』


「へっ…！そ、それは人間なんじゃないですか？」


『ううん。私はゴリラだと思ってたんだけど、こんなに走れるゴリラ知らないから、新種のゴリラだと思う』


「あ、あの、Aさん！安室さんが怒ってるのでこの車、降りた方がいいかと」


『え、やだ。降りたらなんかヤバそう』


「…黙って聞いてればゴリラだのなんだのふざけているんですか？」


『いえ、真面目に話してました』


「…はぁ。まぁ、いいでしょう。高木刑事。この子借りますよ」








高木刑事が怯えている間に腕ごと引っ張られて車内から連れ出される。


赤井さんとコナンくんの誘惑を断ち切ってまで帰るとこだったのに、最後の最後で降谷に捕まるとは。


…これはタクシー代ケチった私への罰ですか？


急ぎ足でおそらく車に向かっているであろう降谷の歩幅は大きくて、早歩きをしても足がもつれそう…。






「まったくお前というやつは…。少しは公安警察という自覚を持て」


『…なんで？同じ警察なのに隔てられなきゃいけないの？』


「あっちはこういうのがお箱だろ？お前の得意分野でもないのに首を突っ込むな」


『突っ込ませたのは降谷じゃん』


「深入りするなと言っているんだ」


『なんでっ……よ…』








ふと見上げた降谷の横顔はもう反論する気にはなれなかった。


唇を引き結んでただ目的に向かって歩く横顔にどうしようもなく哀愁が漂っていたからだ。


…ダメだな。私。


こんな時、景光くんならなんとかしてあげられたんだろうけど…。


私には彼のパーソナルスペースには入れそうにない。


私よりたくさんのものを犠牲にしてきたこの人に何をしてあげればいいのか分からない。


人として何か欠落していると思っていたが、どうやら私は存外臆病のようだ。

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