【テニプリ】君と夢を見た日。【短編集】

青い幸せは二人で【幸村精市】 ページ16

圧倒的な幸せは、時に人を怖がらせることもあるんだよって。
それから、この平凡な日々を君は肯定した。

ああ、平凡と言えば平凡だ。例えばある分野で世界を取ったとして、それだけで特別だ、とは俺は思わない。毎日試合をして、取材を受けて、テレビに出て。特に何も変わらず日々が流れていくのが、一体平凡と呼ばすなんと呼ぶのだろう。

ああ、圧倒的な幸せなんて続くはずもないさ。
いつか訪れる崩落に身を強張らせて生きるんだ。ただ何一つ代り映えしない日々の中で。

そんな日々を、たった一つ、世界で一つだけの特別が塗り替えていった。

『＿＿生きている日々の、全てが幸せだと思いませんか？』

瞬間、全てが変わっていくような気がした。女神が手を差し伸べているような気がした。

ようやく、世界が回り出したような気がした。

俺は、怖い。
怖かった。いつか訪れるその日が。

＿＿大丈夫、怖がらないで笑っていて。


「本当の幸せってさ、こんな日々の事を言うんだね」
「突然どうしたの？」
「……なんだか君が教えてくれたことを思い出しちゃった」

変わる、変わる。見える色が変わっていく。

輝いていて、眩しくて、どうしようもなく愛おしい色。

「君と生きる小さな日々が、俺にはかけがえのない最高の幸せなんだって、わかったんだ」

運命は、まるでそんな小さな幸せに紛れるようにコロンと転がっていた。

気づかなかっただけ。全部全部、ずーっと昔から足元に転がっていたらしい。拾いあげて、小さなきらめきは大きな光に変わって世界に降り注いでいく。

「……そうだね、これが幸せだ」

噛み締めるように息をしたい。どうか死ぬまで、一生続いていて。

「生きてるってだけで、十分奇跡だよ」

遥か遠くは誰にも見えないけれど、それでもその場所が永遠に続いていると信じていた。

助走を付けて俺の手の中で肩で息をした花が飲み込まれそうな青色の欠片を落とした。

「……永遠の幸福」

青色の花は笑う。幸せを記して微笑んでいる。

「一生、幸せになろう」

だってそうだろう、ただお互いと一緒にいるだけでそれが幸せへと変わっていくのだから。

きっとこの色が、本当の幸せの色。さあ、二人抱き締めて生きていこう。

いつか永遠の終わるその瞬間まで。

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