いらぬ思いを ページ25
あ、と敦君が小さく声を漏らした。その視線の先に、新聞の切れ端──
「肝心の写真部分が千切れてるね」
「何処かに落ちてるんでしょうか」
そう云って探しだそうとする敦君を慌てて『いやいやいや！』と引き留めた。変なものでも見るような顔をした敦君にガラスのハートが少しばかり抉れた。
云い訳をしようとした私の言葉を遮ったのは、谷崎君の「超推理!!」という大声だった。私の時よりも変な顔になった敦君。
ぴっと決めポーズ(？)としたまま止まっている谷崎君と、どういうことなのか理解できずに固まる敦君と、決めポーズしている谷崎君が可愛すぎて震える私。御免やばい可愛い本当反則。
「……駄目だ。何も判ンない」
『んんっ！』
え、何それ可愛すぎじゃない？ 何でそんな可愛いの谷崎君？
という言葉を一切外には出せずに地面にいきなり蹲った私を、敦君は「えっ、大丈夫？」と心配した声色で訊ねた。うわあああ！ その優しさが痛い!! 何か御免ね!!
「推理と云えば、出掛ける前に乱歩さんが」
矢張りできない、と断ろうとした彼に乱歩さんは「もうこれは君の事件だ」と云い放ったらしい。が、気が変わったのか助言だけしてくれたという。
��困ったら『花屋を捜せ』��。
その一言じゃ……、と首を捻る敦君。それとは別に、谷崎君が鑑識さんに声を掛けられて写真付きの紙を渡される。
──ドクン、と心臓が大きく脈打った感覚がした。
「敦君。指紋から被害者の身元が割れたよ」
この人だ、と云って紙を掲げた谷崎君に──それを覗き込もうとする敦君。
私は思わず、彼の肩を掴んだ。驚いて振り返った敦君に、『駄目、だ』と掠れた声で云ってしまう。ああ、云ってしまった。
いらぬ心配だ。無意味な同情だ。
だというのに、彼の方が泣きたくなるに決まってるのに、私は『駄目だ』と繰り返してしまう。
『頼むよ、君が、君がそんな思いをする必要は──ない、無いはずだろう？ なあ、』
うわごとのように呟く私を落ち着かせようとして──敦君は、その写真を、見てしまう。
彼の眼が、恐怖により最大限に見開かれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 616人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シュークリーム - 題名に釣られたポオ君推し系の人ですどうも()あの〜……、貴方は神ですか……？最高です！文才がないうちからしたらとても尊敬します！今後も頑張ってください！ (2023年5月4日 18時) (
レス) id: 8e2a6ae821 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - ダリアさん» コメントありがとう御座います、嬉しいですね。時間は今は嫌という程あるので、お言葉に甘えさせて頂きます。 (2020年4月22日 9時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 私は白夜の世界推し続けるさん» そうなんですか、大丈夫でしたか……？書き溜めている分はいつも通り投稿させて頂きますが、嬉しいお言葉ありがとう御座います！ (2020年4月22日 9時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
ダリア - ストーカーですか…知らない人に訳わからないこと言われると「え？」ってなりますよね…こんな時期ですし、ゆっくり休んでください！小説の方も頑張ってください！ (2020年4月22日 9時) (レス) id: 6c92e05c62 (このIDを非表示/違反報告)
私は白夜の世界推し続ける - 大丈夫ですか!?ストーカー紛いのこと自分もされたことあるんですが、気持ち悪いですよね...今はゆっくり休んでくださいね！ (2020年4月21日 20時) (レス) id: 80e5573ebd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白夜の世界
| 作成日時：2019年10月5日 16時
