最初で最後の問い ページ19
凪はぱくぱくと口を動かして、辺りを少し見回して。
その何処にも見つからなかった答えを知りたくて、凪は国木田に問いかけた。
『わた、し。皆と全然違くても、皆をわざと、危険にしたりしても』
──此処に居ていいですか。
何かを必死に堪えたような顔で、奥歯を噛みしめて云った言葉を、国木田は数度頭の中で反芻させた。
そして泣きそうな表情の凪に近づくと、ぽん、と。
「阿呆。
何処に行っても、連れ戻すに決まってるだろ」
この世界に来てから一番に会った、あの人の言葉じゃなかった。
この世界で一番私を判ってくれる、名探偵の言葉じゃなかった。
自分の世界の、友人の言葉でもなかった。
それなのに、自分の目からは水滴が落ちて。胸の中はぽかぽか暖かくなって。
とても嬉しかった。
自分の存在意義を──否、存在意義なんて御大層なものじゃない。
居ていいよ。
何よりも必要だったその言葉が、何よりも欲しかったその言葉が。
『ありがとう、御座います』
凪は本心を込めて、そう云った。
私は皆と別れた。一つ用事があったのだ。
その場所へ向かうと、予想通りルイーザちゃん、ジョン、マークが居た。ラヴクラフトは海に沈んでいく処だった。私はそっと見ない振りをした。
『ええと、どうも』
私はそう声をかけた。驚きに満ちた三人の問いには苦笑で返す。
『ルイーザちゃんだよね。云いたいことがあって来たんだけど……いいかな。……やっぱ探偵社員は信用なんないか』
小首を傾げて訊ねる私に、三人は顔を見合わせた。
そして私は、ルイーザちゃんに、一言だけ云った。
『フィッツジェラルドは、生きてると思うよ』
敵の云うことをどれだけ信じてくれたかは判らないが、彼女の表情の変わりようだけで、私は此処へ来た目的を果たせたと云えた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
太宰さんや乱歩さんが頑張ってきたものを全て横からさらっていく漁夫の利の国木田さんスタイル。
いやー半端ないね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 616人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シュークリーム - 題名に釣られたポオ君推し系の人ですどうも()あの〜……、貴方は神ですか……？最高です！文才がないうちからしたらとても尊敬します！今後も頑張ってください！ (2023年5月4日 18時) (
レス) id: 8e2a6ae821 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - ダリアさん» コメントありがとう御座います、嬉しいですね。時間は今は嫌という程あるので、お言葉に甘えさせて頂きます。 (2020年4月22日 9時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 私は白夜の世界推し続けるさん» そうなんですか、大丈夫でしたか……？書き溜めている分はいつも通り投稿させて頂きますが、嬉しいお言葉ありがとう御座います！ (2020年4月22日 9時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
ダリア - ストーカーですか…知らない人に訳わからないこと言われると「え？」ってなりますよね…こんな時期ですし、ゆっくり休んでください！小説の方も頑張ってください！ (2020年4月22日 9時) (レス) id: 6c92e05c62 (このIDを非表示/違反報告)
私は白夜の世界推し続ける - 大丈夫ですか!?ストーカー紛いのこと自分もされたことあるんですが、気持ち悪いですよね...今はゆっくり休んでくださいね！ (2020年4月21日 20時) (レス) id: 80e5573ebd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白夜の世界
| 作成日時：2019年10月5日 16時
