第三話 記憶と眠気 ページ3
時間は7:30。
まだ妹たちは寝ているようで
起きてくる気配はない。
「(ったく俺の冷え性は誰から
遺伝したんだろう)」
母は冷え性ではない。
彼の父も違っていた気がする。
いや、男が冷え性って時点で
結構珍しい方なんだろうけど。
「全く……勘弁してよね──」
微かに零したその言葉は、
静かな部屋に溶け込んでいった。
静まり返った部屋にカチッという
音だけが響いた。
どうやらお湯が湧いたようだ。
Aはケトルを持つと、
ミルクティーの素が入った
コーヒーカップに
お湯を注ぎ始めた。
その場に立ち込める湯気と甘い香りが
キッチンを支配していく。
出来上がったミルクティーを持って、
リビングにある黒いソファーへと移動した。
外では鳥のさえずりが聞こえ始め、
外はだいぶ明るくなっていた。
ミルクティーをひとくち口に含み、
ほっと息をつく。
もう1度カレンダーを見て、今日は
日曜だったことを思い出す。
「(そういや学校は休みか……)」
どうりで妹弟たちは起きてこないわけだ。
早起きをして損をしたなぁ、と考える。
ただただ寒い思いをしただけではないか。
「大体、あんな夢を見たのが悪いんだ」
昔の記憶──
思い出したくもない記憶が、夢に現れた。
嫌な記憶ほど覚えているものだ、と
友人が言っていたのを思い出す。
「……ホントに嫌な記憶だよ。
一生封印してたい……」
何をするにも暇だと考えたA。
二度寝をするにも
カフェインを摂取した今、
眠れるかは怪しいところだ。
あいつらが起きるまで
本でも読むかな……。
Aは1度自室にもどり、
数冊本を手に持って
リビングに戻ってきた。
ソファーに腰をかけ、
何度読み返したかも
覚えていない本をパラパラと捲る。
「……暇」
再び時計を見るが、さっきより
1、2分しか変わらない。
どうしてこんなに早く
起きてしまったのか、
Aは再び後悔した。
これから家で何をしようかと考えていると、
自然と眠気が襲ってきた。
ウトウトと瞼がゆっくり落ちてくる。
「……ちょっとくらい、いっか」
読みかけの本を机に置き、
そのまま目を閉じた。
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作者名：GISELe | 作者ホームページ：後日専用ホムペを作成予定
作成日時：2018年9月24日 17時
