第一話 夢と現実 ページ1
「開けてよ！ねぇっパパっ！ママっ！」
暗闇に取り残された少年は
必死に親を呼ぶ。
鍵のかかった部屋に響く少年の叫び声。
その声はただ反響するだけで、
何の反応も返ってこない。
冷たくなった手を必死に息で温めながら
部屋の隅で大人しくすることにした。
泣き腫らした目は未だに潤んでおり、
スカイブルーの瞳をキラキラと
濡らしている。
「パパは、Aの綺麗な顔が大好きだよ──」
大好きな父の言葉を思い出しては、
ぐっと涙をこらえる。
泣いたら綺麗な顔じゃなくなる。
泣いたら……綺麗な顔じゃなくなったら……
父に嫌われてしまう──
それが怖くて、嫌われない一心に
涙を拭い続けた……
はっ、と目を覚ましたAは、
寝起き早々嫌な夢を見たと顔を歪ませた。
「(朝から何てものを見てるんだよ……)」
もう昔のことなのに……。
未だにトラウマとして残っている。
朝から嫌な気分で目が覚めたため、
Aは少し不機嫌だ。
ベッドから降りると、少し肌寒く
一気に手が冷えた。
クローゼットにしまってある
ロングカーディガンを羽織ると
Aは部屋から出た。
リビングに向かうと、誰も起きてはおらず
しん、と静まり返っていた。
「にしても寒っ……」
Aはブルっと肩を震わせた。
壁にかけられたカレンダーに目をやると
10月のページが貼られていた。
どうりで寒いわけだ。
ほかの人からすれば１０月は肌寒いと
感じるくらいなのだろうが、
Aにとっては普通の人の
何倍も寒さを感じていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：GISELe | 作者ホームページ：後日専用ホムペを作成予定
作成日時：2018年9月24日 17時
