不死の元遊女、見習い審神者です (ページ45)

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44話雅なことはよく分からんページ45

戸棚に飾られていた椿の髪飾りを
眺めていると、薬研が戻ってきた。

その手には赤い椿があしらわれた
黒い着物がかけられていた。

「雅なことはよく分からなくてな……」

「私に似合うと思って選んでくれたのでしょう？気持ちがこもっていれば何をもらっても嬉しいですよ」

Aはそう言うと、着物を受け取り
柔らかい笑みを零した。

椿の髪飾りとともに着物を老婆に渡した。

丁寧に風呂敷に包まれたそれを
受け取ったAは会計をして、
店をあとにする。

「薬研はどうしてずっと手袋をつけているんですか？」

先程本丸で見かけた内番服の時もだが、
戦闘服である今の衣装でさえ
手袋を外そうとはしない。

何か外したくない理由があるのは確かだ。

Aは気になり、少しだけ距離を
詰めて聞いてみた。

「……本能寺でな、負った火傷なんだ」

ポツリと語られたその言葉は
色々な意味が含まれているように
思われた。

薬研の表情は影が落とされて
よくは分からない。

けど、物寂しいような顔を
しているのだろう。

「……そうなんですか」

Aはそれ以上は何も言えなくなった。

薬研からしても聞かれたくないこと
だろうと思ったからだ。

「次は万屋に行くんだろう？急がねぇと燭台切の旦那を待たせちまうぞ」

そう言った薬研はニカッと明るく笑うとAの先をゆくように歩き出した。