17話 まさか口説かれるとは ページ18
ここに来て、昔のことをこんなにも思い出すとは思いもしなかった。
胸のあたりがじんわりと温かくなる。
「A、薬研のこと手入れしてあげたら」
清光が思い出したかのようにそう言った。
「僕の時みたいに荒治療で」
安定も笑いながらAに促す。
その言葉にAは頷き、
薬研の近くに寄った。
「薬研さん、本体をお借りしても
いいですか?」
「いいぜ。昔みたいに薬研って呼んでくれや。落ち着かねぇからな」
「了解です」
Aは手に取った薬研の刀を
安定の時のように、丁寧に時間を掛けて
手入れしていく。
「……丁寧な手入れだな。随分と心地がいい。
今まで来た見習いの奴らは霊力を
無理矢理流し込んで、直してたからな。
それこそ荒治療だぜ」
Aが来る前にも、
何人か見習いは来ていたようだ。
「そりゃ、その子たちが刀の扱い方を
知らなかったんですね。
若い娘だったんでしょう?」
「そうだな。にしても昔から思っていたが、
あんたはべっぴんさんだなぁ。
嫁に欲しいくらいだぜ」
「口達者なお人ですね」
まさか、信長さんの懐刀であった薬研に
口説かれるとは思わなかったなァ。
男前すぎて惚れちまいそうだ。
「でもほらAって誰かと噂されてたよね」
安定は思い出したように口を開いた。
「えっと確か……遊郭の楼主の息子の」
清光もなにか思い当たる節があるようだ。
Aも彼らが何を言いたいのか分かり、
言葉を繋いだ。
「
「そうそう、其の人だよ」
安定は嬉しそうに肯定した。
「もう、昔の話ですがね」
あのお方は本当にお優しかった。
今じゃもう、会えないだろうけど。
この話はまた後で皆にも話してあげよう。
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同田貫正国
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作者名:泡沫 ヒナ | 作者ホームページ:後日専用ホムペを作成予定
作成日時:2018年7月29日 22時