EWの短編集

エッド ページ50

※前回の「エッド」の続き



先日の緑色のエンカウンターさんには、習う所が多いと思った。自然と人を引き寄せるような喋り方で、わたしもそんな喋り方をしたい。

「えっ！？前に話したのもあったけど、Aって着眼点がちょっとずれてるね。そこも良いと思うけど」

褒められてるのか分からないけど、彼の言葉に戸惑う。喋り方が好きだと言うと、少し複雑そうな顔をしている。そんなに難しいことを言ったのかと思ったけど、確かに無自覚っぽい受け答えをしているし答え方は難しいかもしれない。

「喋り方なんて僕にとっちゃ無意識の産物だし。よく分からないや」

わたしも意識して喋り方を変えることは、なかなか無い。日本人が喋り方のパターンが複数あるって聞いた時は驚いたけど、日本人が几帳面すぎるだけだと思う。ケーゴ、ソンケーゴ、後はその他諸々で分からない。
そこでふと思い立つ、彼の喋り方を常に観察すれば良いのか。そうすれば何とかなるかも。

「ええっ！？今日は丸々僕といたいの！？あ……うん、構わないけど」

やはり驚かれ、断られるかと思ったけどそんなことは無かった。最初は怖気づいている雰囲気だったけど、途中からノリノリになった。最近のこととか彼の友達の話とか、色々聞いていた。デッドラインの上で越えるか越えないかのチキンレースをするみたいな冒険譚を髣髴させる話もあって、それはそれで目を丸くしながら聞いた。

「―――とまあ、こんな感じかな。君からの質問もあったからノッてしまったよ。もうない？」

首を横に振って、質問は無いと示す。確かに喋っている間は、目をキラキラさせてわたしにずーっと目線を送ってた。ちょっと恥ずかしくて、受け入れられずに目線を反らした。それに、どういう反応をすれば良いのか分からない。

「Aに話すのは僕も好き、顔を見ながら話すのも好き」

間の抜けた笑顔とセリフを並べて、それ以上は言わなくても良いと言う。聞いているか分からないようで、にこにこしている。初対面と違って、ぐいぐい来るので困惑する。

「好きがいっぱいの人に、自分の一部でも好きって言われたら期待するよ？」

突然言われて、顔が異様に熱くなる。そして、わたしの手を軽く取る。初対面の時より、とてもまっすぐで温かな手だ。

「なーんて、Aったら驚いた？」

茶目っ気溢れた様子で言われたけど、心臓の鼓動がうるさい。今日一日一緒にいられるか心配になってきた。


「うぅ……僕って奥手でダメだなあ……」

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