マット ページ42
※リクエスト
歩いていると突然後ろから重みがどっかりやってくる。驚いたけど、後ろから伸びてきてわたしを包むものを見て妙に冷静になった。これをするのは1人しか思い当たらない。
「ぎゅーっ!」
こんなに無邪気に言う人は、恋人のマットしかいない。彼の方が大きいので、腕の中にすっぽり収まる。体は大きいのに言動は子どもとチグハグだと思うけど、愛おしいから好き。
でも恥ずかしいので離れてもらう、そういう感じに翻弄されてる。
「ボクのだっこはキライ?前はそーじゃないって言ってたよ?」
言うんじゃない!バカ!声がデカい!
少し背伸びして彼の頭を軽く叩く。すると、「いったーい!でも、キミからの愛だっ……いったーい!」と言った。最後は余計なことを言いそうだから、もう一発頭に入れた。
「テレ隠しはダメだって。ボクはホントのこと分かってるけど」
何が分かってるんだ!なーにーが!
目線を集めているのは誰のせいだ。結局外を出歩くのを諦め、自宅に向かい彼を招き入れた。
「久しぶりー!ミシェル、ご主人サマのAとなかよし?」
わたしの昔から大事にしているぬいぐるみに話す様子は、本当に子どもだ。勝手に名付けるなとあれ程に言ったのに。
「大事なんでしょ?名前をつけてあげないと、ミシェルがかわいそうだよ?ねー?」
にこにこと悪びれもなくぬいぐるみに対して言うから、これ以上は言う気がなくなる。多分甘いって、彼の友達から言われそう。
「……どーして、エッドの名前が出るの?」
マズイ、思わず彼の友達の名前をぼやいた。珍しく少し不機嫌そうに近寄って、追い詰められる。
「ボクがいるのに、他の人の……ともだちでも名前を言ってほしくないよ……」
突然真正面から抱きついて、悲しそうな声で言った。
唐突でびっくりした。されてることで心臓がバクバクで鼓動が激しくなって顔が熱くなる。いつも無邪気に振る舞っているから、嫉妬の感情を初めて向けられた困惑と嬉しさみたいなのが一気に込み上げる。それでも、我ながらたどたどしい口調で謝った。
「いいよ、ボクもちょっとびっくりしてる。おあいこ」
お互い驚いているってどういうことだろう、ちょっとおかしくて笑う。マットも嬉しそうにわたしに頬ずりをしている。今度はちょっと痛いけど、別に良いや。
「今はAがほしいな……んーっ」
突然キスをされた。唇どうしで驚き、次の瞬間では彼の顔が間近に見えた。
「やっぱり、これでおあいこにしよ?ね?」
29人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さとうみさん(プロフ) - 脚立無理さん» コメントと感想ありがとうございます。今更の返信ですみません、最初は勢いとノリだけで書かせていただいたものなので、お見苦しい所が散見いたします。しかし、脚立無理さんがそのように仰っていただけたので、至極光栄です。またお暇な時にご覧になってください! (7月19日 19時) (レス) id: 563e8e19e1 (このIDを非表示/違反報告)
脚立無理(プロフ) - こんにちは、さとうみさん。初めてコメント失礼します。とても読みやすくて、頭でシーンを想像しながら何度も読み返しています。とてもキュンキュンして最高です...( ꈍᴗꈍ) (5月18日 10時) (レス) @page50 id: 130f422966 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん - 熊井さん» コメントありがとうございます!実はゾンビのサンタのお話を考えていましたが、彼のクリスマスをぼろくそに言うシーンを書きたくてこのお話になりました(笑) (2022年12月25日 19時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
熊井 - やっぱりクリスマスと言ったら、彼ですよね〜(○´∀`○) (2022年12月25日 19時) (レス) @page46 id: 7220adac43 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん - ミイミイー☆(新アカ)さん» コメントとリクエストありがとうございます!前者はスイッチが入ったら面白いことになりそうな恋人を書いてました。後者は気が付くと危ない話になりました()一応短編集は続編も考えていますが、走り切る気です。ミイミイー☆さんも頑張ってください! (2022年12月22日 13時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ