エル(ELLSWORLD) ページ32
※前々回の『エル(ELLSWORLD)』の続き
私用の買い物を終えて家に帰ると、着飾った綺麗な女性がいて驚いた。私に向かって微笑みかけ、ここで初めてAと分かった。瞬間、どきどきして何とも言えない気持ちになる。それに服装とメイクを変えただけで誰か分からなくなってしまうかと感心する。
「A、今度はこっちね!あ、エルおかえり!」
「……どっか良いとこ行くの?」
「ううん、着せたかったの!」
ドレスコードな服装のAを見て、高級レストランやお堅い場所に行くのかと訊ねる。マチルダの返答にはらしさがあったが、付き合っている方もノっている。綺麗に着飾ることは、女性全員の願いやサガかもしれない。
マチルダからドレスを受け取ったAは、部屋の奥へ行った。しばらくして、別のドレスを着て帰って来た。
「すごい変わるわね。A、似合ってるわ」
「ワタシも驚いたの、何でも似合うから色々着せちゃいたい!」
「休憩したら?結構着替えてお互い大変そうじゃない?」
「それもそうね……ゴメンねA、休憩しましょ?」
Aは着飾っても若干気疲れしていると気づき、マチルダに声をかける。マチルダはアクセサリーを探しに自室に戻り、リビングは私たちだけになる。
「オレンジジュース飲む?」
持ってた買い物袋から、一応買ったオレンジジュースのボトルを取り出す。嬉しそうに頷くAを見て、キッチンの棚からコップを取り出して注ぐ。
ふと彼女を見ると、背を向けてイスに座ってた。背もたれがないイスで、背中が開いて丸見えなデザインのドレスなので白い素肌がよく見える。イケナイものを見てる感じでも、見たくて食い入るように見た。
無意識に足が進んで、手を伸ばせば触りたくて仕方のない存在が間近に迫る。手を伸ばして、その白い素肌を指先で撫でた。きめが細かく、ずっと触っていられる錯覚に陥った。
「わ!ごめんなさいッ!?」
Aが甲高く短い悲鳴をあげた。自分も驚いて手を引っ込め、真っ赤な顔を向ける彼女に謝った。何でこんなことしたんだろう、心臓が大きく激しく鼓動している。慌てた口ぶりで大丈夫と告げるがそんな風に見えない、自分のせいだけど。
「A!大丈夫!?どうしたの!?」
彼女より慌てたマチルダが現れ、私たちは妙に冷静になった。宥めるのに時間がかかった。
その間も、自分が理解できない困惑と触れた高揚感を忘れられないでいた。この先、Aを見る度に思い出すんじゃないかと思う。
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さとうみさん(プロフ) - 脚立無理さん» コメントと感想ありがとうございます。今更の返信ですみません、最初は勢いとノリだけで書かせていただいたものなので、お見苦しい所が散見いたします。しかし、脚立無理さんがそのように仰っていただけたので、至極光栄です。またお暇な時にご覧になってください! (7月19日 19時) (レス) id: 563e8e19e1 (このIDを非表示/違反報告)
脚立無理(プロフ) - こんにちは、さとうみさん。初めてコメント失礼します。とても読みやすくて、頭でシーンを想像しながら何度も読み返しています。とてもキュンキュンして最高です...( ꈍᴗꈍ) (5月18日 10時) (レス) @page50 id: 130f422966 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん - 熊井さん» コメントありがとうございます!実はゾンビのサンタのお話を考えていましたが、彼のクリスマスをぼろくそに言うシーンを書きたくてこのお話になりました(笑) (2022年12月25日 19時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
熊井 - やっぱりクリスマスと言ったら、彼ですよね〜(○´∀`○) (2022年12月25日 19時) (レス) @page46 id: 7220adac43 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん - ミイミイー☆(新アカ)さん» コメントとリクエストありがとうございます!前者はスイッチが入ったら面白いことになりそうな恋人を書いてました。後者は気が付くと危ない話になりました()一応短編集は続編も考えていますが、走り切る気です。ミイミイー☆さんも頑張ってください! (2022年12月22日 13時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
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