エッド ページ22
今日は何だか眠れなくて、パジャマから服に着替えて外をうろついていた。やっぱり寒くて、体がぶるぶると最初は震えていた。
もし警察に見つかれば下手したら呼び止められるかもしれないけど、何かしていないと落ち着かない程に静かな夜でもあった。
「夜中に1人は危険だよ」
かけられた声の方を見ると、暗い中でも目立つ緑色のパーカーを着た青年と目が合う。知人というだけあって反射的に片手を軽く上げて挨拶をした。それはお互い様だと先程の言葉に返事をすると、彼は少しぎこちない笑顔でほおを軽くかいていた。
「僕は男だけど、Aは女の子だし。そっちが狙われるって」
それはそうだが、エッドも脅威に抗う術を持っていたのかと疑う。彼が「一緒に行っても良いかな」と言い、断る理由は無いので頷いて、共に歩き始める。
「本当に静かだ。何だか僕たちが取り残された気分だよ」
近くに見える家には小さな明かりしか見えないような、それ程の深夜で冷たい風と暗い空に瞬くたくさんの星々が更に人影のなさを感じる。星空に手を伸ばしたら、夜風に当たってちょっと冷たくなった。
「星に手が届くって思ったんだ?そういう可愛いとこあるんだね」
茶化されているのかと思って、恥ずかしくなって手を引っ込めて顔を下に向けた。深夜テンションだったのかと、少し冷えた手を擦った。
「ほら、寒いでしょ」
恥ずかしさが引いて顔を上げると、手を差し出しているエッドがいた。訳が分からず、ムダに瞬きをしてその手を見ると、「手を繋ぐのは嫌?」と言われる。交際していない男女が手を繋ぐのは抵抗があるので頷くと、少し眉を下げて謝ってきた。気にしていないと言うしかできない。
ぶらぶらしすぎて我が家に着いたので、お詫びにさくっと作ったホットミルクを家の外で待ってくれた彼にプレゼントした。
「寒空だから身に染みるよ、ありがとう」
穏やかな笑みをたたえて飲む横で、私も同じ物を飲む。野外の夜でこうやって飲むのは久しい。
「僕ね、好きな人がいるんだけど……難儀なもので、なかなか進展しないんだ」
大変だねと言えば、苦笑して「本当に。危機感も薄い鈍さだけど、Aみたいに優しいとこも可愛いとこもたくさんあるよ」と穏やかな口調で言った。私をそんな風に見ていたことと、自分と同じ人がいたのかと疑問に思う。
「楽しかったよ、おやすみ」
空のマグカップを渡されて、笑顔で帰って行った。眠い目を擦りながら、その後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
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さとうみさん(プロフ) - 脚立無理さん» コメントと感想ありがとうございます。今更の返信ですみません、最初は勢いとノリだけで書かせていただいたものなので、お見苦しい所が散見いたします。しかし、脚立無理さんがそのように仰っていただけたので、至極光栄です。またお暇な時にご覧になってください! (7月19日 19時) (レス) id: 563e8e19e1 (このIDを非表示/違反報告)
脚立無理(プロフ) - こんにちは、さとうみさん。初めてコメント失礼します。とても読みやすくて、頭でシーンを想像しながら何度も読み返しています。とてもキュンキュンして最高です...( ꈍᴗꈍ) (5月18日 10時) (レス) @page50 id: 130f422966 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん - 熊井さん» コメントありがとうございます!実はゾンビのサンタのお話を考えていましたが、彼のクリスマスをぼろくそに言うシーンを書きたくてこのお話になりました(笑) (2022年12月25日 19時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
熊井 - やっぱりクリスマスと言ったら、彼ですよね〜(○´∀`○) (2022年12月25日 19時) (レス) @page46 id: 7220adac43 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん - ミイミイー☆(新アカ)さん» コメントとリクエストありがとうございます!前者はスイッチが入ったら面白いことになりそうな恋人を書いてました。後者は気が付くと危ない話になりました()一応短編集は続編も考えていますが、走り切る気です。ミイミイー☆さんも頑張ってください! (2022年12月22日 13時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
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