トム ページ20
雨が降って来て、濡れる外を窓から眺める。
「助かったが、鍵ぐらいかけとけ」
ぼんやり窓を眺めていると、びしょ濡れのトムが入って来た。いつも逆立っている髪が頭にへばりついている。鍵をかけるのを忘れたと思いながら、鍵をかけている彼にシャワーを勧める。
「ここに服とかあるか、浴びてくるぜ」
恋人だから、我が家に彼の私物がある。服とか下着とかちょっとした物々だが。
再び窓に目を向けて、零れ落ちる雫や外から聞こえる音を楽しんでいるとシャワーを終えて着替えたトムが傍にやって来た。
「シャワー貸してくれてありがとな。外見てるが飽きねえか？」
彼に向いて頷くと、隣に座って来た。隣から腕が伸びてきて、抱き寄せられて驚いて目を丸くしてしまう。驚いた表情で彼を見上げると、「悪いか」と言われた。全然悪くないけど、いきなりで驚いたというのか、基本的に共に過ごすのは物静かだが時々大胆な人だ。
「シャワーも浴びたが温もるならアンタが一番だ……しかし、恥ずかしがってどうした？」
茶化されているけど、横から抱き寄せられて後ろから抱きしめられているから、恥ずかしいに決まっている。顔が熱くて視界も揺らいでいる中、頭を撫でられ愛玩動物になった気分だ。彼の手を頭から離して、後目で穏やかな表情を見る。
「頭撫でられるの嫌いか？すまんすまん」
顔を近づけられたと思ったら、首筋に何か当たる。驚いてびくっと体が大きく跳ねて、顔が熱くなる。触れられて平気でいられる場所じゃないから変な声が出て、彼に文句を言った。
「ワガママだな。訊いとくが、どういうことなら良いんだ？」
その割には、肩から覗かせる顔がからかっているようにしか見えない。口をゆっくり開けて、言葉を出した。驚いたし自分ばかり翻弄されてズルいと言った。
「あーそうだな……」
突然どもって腕が緩んだので、巻き付いていた腕を少し浮かせた。動けるようになったので体を向けたら、密着していただけあって顔が近くに見える。向こうも驚いて一瞬だけ目が白くなって、今度は顔を少し赤らめた。
「言わせてもらうが、俺がいるのに外見て無視しただろ。だから文句言うな」
嫉妬していたらしく、少し悔しそうに言っていた。その姿が愛おしく感じて、トムの唇に自身の唇を重ねた。すぐに唇を離して、トムが好きだから緊張してしまうと伝えた。
「ああ、俺もAが好きだ。まあ、こっちは緊張しないが」
お互い様だと思いながら、彼の首に腕を回して抱き締めた。
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