story23 ページ25
「A……。」
俺はベッドで眠る女に声をかける。
けれど、その閉じた瞳が開くことも、心地よい声の返答が返ってくることもない。
本当に、最悪だ。
今日はAの大切な日のはずなのに、俺のせいでこんな目に遭わせて。
あの時Aに見つかったのが、一番まずかった。
Aが不良から俺を庇って刺された、それを理解するまでどれだけかかっただろう。
逃げていく不良なんて気にもせずに、必死に名前を呼び続けた。
救急車で病院に運ばれて、命は助かった。
けれど、暫くは立つこともできないし、出血が酷かった為に
最悪の場合昏睡状態に陥るらしい。
今の情況は今まで見たことない程最悪だが、どこか既視感を感じる。
立場は逆だったが、あの時と似ていた。
俺が、この世に出てきた日に。
・
・
・
俺は、ある時突然自分の存在を認識した。
『剣城京介』の心の中の、欲が集まって作られた存在。
表に出ることの無い、隠れた心。
『剣城京介』を通じて俺はある女の為に作られたのだと知った。
林内A。
天真爛漫で、可愛い、幼馴染みの女。
『剣城京介』…もう一人の俺は、Aを大切にしていた。
けれど、男であるからには好きな奴に欲を抱く。
滅茶苦茶にして独占したくなる。
もう一人の俺はそんな気持ちを封じる為に、無意識に俺を作り上げていた。
そんな欲の固まりとも言える俺からすれば、あいつの行為は何とも臆病に見えた。
俺なら自分の欲も、Aも満たしてやれるのに。
そう思っていた矢先だった。
あいつがAを庇ったのは。
ドン!!
強い衝撃と共に、俺はぐいと前に引っ張り出された。
それと同時に、もう一人の俺が心の奥に消えていく。
そして、消える直前、あいつはふっと笑っていた。
「Aを、お前なりのやり方でいいから愛して、守ってくれ。」
言葉の意味はよく分からなかったが、その瞬間、意識が真っ白になった。
そして、次に目覚めた時には、
「……は…？」
俺は俺の意志で身体を動かせていた。
それが、俺が『剣城京介』になった瞬間だった。
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豆腐(プロフ) - めちゃくちゃ感動しました！文才半端ないですね!!尊敬します!!これからも頑張って下さい!! (2013年4月13日 22時) (
レス) id: 0b9bb3093c (このIDを非表示/違反報告)
こてっちゃん(プロフ) - ふぁぁぁぁ///もーすっごいよかったです！こんな風に京介に愛されたi(((殴 (2013年3月9日 13時) (レス) id: e003f49911 (このIDを非表示/違反報告)
黒狼 - 初めてコメントさせていただきますが、とても感動的で途中から涙腺ボロボロでした。新作の更新頑張ってください((ニコッ (2013年3月9日 11時) (レス) id: 879f421b48 (このIDを非表示/違反報告)
あかり - 私吸血鬼の小説見てますよ〜♪ なんでしょうかね、この作者の作品をよく見るんです！☆∀☆ (2013年2月26日 10時) (レス) id: dcc5adbbd6 (このIDを非表示/違反報告)
はろはろ☆(プロフ) - ホントに感涙です……。 主人公も剣城もいい人すぎて……。 これからも頑張ってください!! (2013年2月21日 20時) (レス) id: f30d2d76ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬令瑠菜 | 作者ホームページ：http://ameblo.jp/runarunaterulove/
作成日時：2012年12月29日 11時
