story22 ページ24
A、A。
懐かしい声がする。
私はゆっくりと目を開けた。
…といっても、物理的な意味じゃない。
夢の世界だってことは一目瞭然。
だって、辺り一面真っ白な光だし、あの人を庇ってできた傷もない。
あの時、私は咄嗟にあの人に抱きついていた。
危険を知らせるだけで回避できたかもしれないのに、あの人が確実に助かるように。
もしかして今こうしている事自体、死んでいる証拠かもしれないのに
気持ちはどこか落ち着いていた。
A、A。
再び聞こえてきた声に耳を澄ますと、目の前に人影が現れた。
色白で紺色の髪に、長身の人。
何で、夢にもあの人が出てくるんだろ？
私は端正な顔立ちから少し視線をそらした。
「…何で、あなたが出てくるわけ？」
あの人は少し目を見開いてから、ふっと優しく微笑んだ。
「……あなた、か。
心配するまでもなかったみたいだな。」
「え……？」
あの人の言っている事はよく分からないけれど、胸に何かが引っかかっていた。
やがて、あの人は私の頭にそっと手を置いて口を開いた。
「……前に俺が言ったこと、嘘じゃないから。」
へ……？
「俺がずっと隠してきた欲、それがあいつ。
あいつがAにした事は、俺がAにしたかった事。
だから、あいつだけ責めないでくれないか？」
あいつとか俺とか混乱しそうだけど
この人が誰かは薄々分かってきた。
「俺は臆病だったから、Aが満足できるような事を出来なかった。
…すまなかったな。」
「…ううん、もういいの。」
私は抱きつきたい気持ちを必死に抑えて笑った。
こうしてもう一度会えただけで、嬉しいから。
「だから、あいつを愛してやってくれないか？
不器用だけど、お前に対する気持ちは、俺と変わらない。」
「…うん。」
私は、こくりと頷いた。
最後に、ギュッと抱き締められる。
温かい、懐かしい……。
「…俺を、あいつを守ってくれて、ありがとう。」
「京介も、私を守ってくれて、ありがとう。」
互いに伝えたいことを言ってから、私達は身体を離した。
「もう戻れ。
…あいつが待ってる。」
「うん……さよなら、京介。」
「あぁ。」
二度と会えない、私の初恋の人。
でも、もう寂しくないよ。
微笑むと、京介の笑みがうっすら白い光に消えていった。
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豆腐(プロフ) - めちゃくちゃ感動しました！文才半端ないですね!!尊敬します!!これからも頑張って下さい!! (2013年4月13日 22時) (
レス) id: 0b9bb3093c (このIDを非表示/違反報告)
こてっちゃん(プロフ) - ふぁぁぁぁ///もーすっごいよかったです！こんな風に京介に愛されたi(((殴 (2013年3月9日 13時) (レス) id: e003f49911 (このIDを非表示/違反報告)
黒狼 - 初めてコメントさせていただきますが、とても感動的で途中から涙腺ボロボロでした。新作の更新頑張ってください((ニコッ (2013年3月9日 11時) (レス) id: 879f421b48 (このIDを非表示/違反報告)
あかり - 私吸血鬼の小説見てますよ〜♪ なんでしょうかね、この作者の作品をよく見るんです！☆∀☆ (2013年2月26日 10時) (レス) id: dcc5adbbd6 (このIDを非表示/違反報告)
はろはろ☆(プロフ) - ホントに感涙です……。 主人公も剣城もいい人すぎて……。 これからも頑張ってください!! (2013年2月21日 20時) (レス) id: f30d2d76ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬令瑠菜 | 作者ホームページ：http://ameblo.jp/runarunaterulove/
作成日時：2012年12月29日 11時
