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部屋割り ページ47

見慣れない天井のベニヤ板と、ふかふかの布団に違和感を覚え目を覚ます。
ぱっと起き上がり、伸びをした体を追うような欠伸が出た。

ぼんやりとした思考をまわし、深呼吸をする。ああ、そうだった。

私はあの後、錆兎くんと共に『藤の花の家紋の家』にお邪魔していた。秋田さんに連れられて。

私は秋田さんの家に帰ろうと思ったのだけど、屋敷の主は私を歓迎してくれた。多分、恋人か何かだと勘違いされていたのだろう。

秋田さんはそれを見越した上で、「折角だからお邪魔しな」と言ったのだった。まったく、人の気も知らないで……

そう。そういうわけで。隣には錆兎くんが眠っている。最初は並べて敷かれていた布団は、慌てた私の手によって部屋の端に思い切り寄せられていた。

私はちらりと錆兎くんを見る。戦闘の疲労からか、未だにぐっすりと寝息を立てていた。

昨夜。夕御飯を頂いた後。私はゆっくりお風呂を堪能していた。錆兎くんはお風呂も御飯もさっさと済ませて布団に潜り込んだらしい。用意して頂いたお部屋に入った時には、既に彼は夢の中に居た。

つまり。

錆兎くんは私と同室である事を知らない。

私は思わず溜息をついた。まず寝起きであるこの姿を見られたくないし、錆兎くんも私がこの部屋にいたら驚いてしまうだろう。

私は出来る限り物音を立てずに動く。錆兎くんを凝視しながら、俊敏な動きで着替えを済ませた。
第一関門突破。

次にそろりと布団を畳み、整える。うん、第二関門突破。

最後に……

私はふすまに手を掛けた。大丈夫。錆兎くんは疲れ切っている。起きたりしないさ。

スッと木が擦れる音がした。

ええい!!

私はバッとふすまを開けた。勿論、音を立てないように。

そして脱兎の如く、部屋から逃走を図ったのだった。



「おはよう!!」
「ああ、おはよう……体に障りは無いか?」

とうとう錆兎くんが起きてきて、私は若干ビクビクしながらも明るく接した。

あの後行く宛てが無くなってしまった私は、台所に行き朝御飯の準備をお手伝いしていた。

そこに錆兎くんがやって来た。

もう完全に目が覚めているらしい。昨日の昼と同じ様な顔つきで、こちらへ微笑んだ。

「俺も何かします」
「錆兎くんは怪我してるでしょう!!」

だから居間で座っててと彼を台所から押し出した。

冷静になって考える。布団が二枚用意されている時点で違和感に気づくだろう。それを疑問に思ってるかも。

言わせないぞ、と私は心の中で決心したのだった。

あかい→←別れ



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凪暮(プロフ) - 笹さん» はじめまして!小説を読んで頂き、ありがとうございます!錆兎の小説少ないですよね(笑)これからも面白いものを書けるように頑張ります!コメントありがとうございました(´∀`*) (2020年2月23日 0時) (レス) id: f2693a43aa (このIDを非表示/違反報告)
- はじめまして!コメント失礼します。私錆兎が好きで、小説読んでるんですけど少なくて…面白いのに出会えて嬉しいです!これからも頑張って下さい! (2020年2月21日 2時) (レス) id: b0e039ba17 (このIDを非表示/違反報告)
凪暮(プロフ) - 愛さん» ご指摘ありがとうございます。もっと面白いものにできるよう、更新頑張りますね! (2020年2月10日 12時) (レス) id: 8a0d382133 (このIDを非表示/違反報告)
- 文が淡々としてる気がします。でも面白いので、頑張って下さい (2020年2月10日 2時) (レス) id: f2693a43aa (このIDを非表示/違反報告)
凪暮(プロフ) - せなさん» ありがとうございます!更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします! (2020年2月8日 15時) (レス) id: 8a0d382133 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:凪暮 | 作者ホームページ:https://twitter.com/yume_nlmosuki  
作成日時:2020年2月1日 15時

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