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確かに生きていく手段でしかなかった。最初は。隊士の気持ちを知りたいという興味から鍛錬に励んだ、という事もあるけれど。

教わっていく中で、蓄えた力を人のために使おう、と思った。
そうすれば、私が自分勝手にも捨ててしまった、平成で愛していた人たちへ間接的な罪滅ぼしになると思った。

だけど――だけど、今のザマはなんだ。

高々人間に襲われたくらいで、私は此処から一歩も動くことが出来ない。怖いし痛いし、足の力は入らないし。この子は守らないといけないし、息だってどうやって吸っているのか解らなくて胸が苦しい。

御館様に、秋田さんに、錆兎くんに、私は申し訳が立たない。こんなに無力な娘の面倒を見させてしまった。不甲斐ない弟子を持たせてしまった。そして。

あの時手を引いてくれた事。
「また会おう」と言ってくれた事。
私を信用して、作戦の初動を任せてくれた事。

錆兎くんに、恩を返そうと思っていたのに――

私は今、情けなくもすがろうとしている。
彼なら何とかしてくれるんじゃないか、と思っている。

分かっている。甘えだ。こんな危機的な状況で、私は抗う力も無い。
でも、強い彼ならと、情けなくも声に出してしまう。

「お願い……」

お願いだから。そこから見ているのなら、どうか助けてほしい。

「〜〜っ、錆兎くん……!!」

私は叫ぶ。耐えていた涙はあふれて、春子ちゃんを濡らしてしまう。

その時。


「……待たせた。すまない」
「っ……へ、」


母親は鬼の方に軽く投げ飛ばされて、それを鬼が抱き留めた。抱き留められた母親は、鬼の胸板に頬をすり寄せる。その時の鬼の表情は見えなかった。でも、私にとってそれは些細な事だった。


私の目の前を、白い羽織がおどった。


表通りの微かな明かりに照らされた、宍色(ししいろ)の髪が綺麗に闇夜に映えている。

「春子を頼んだ」

錆兎くんは鬼と相対し、刀を構えていた。

餌→←無力



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凪暮(プロフ) - 笹さん» はじめまして!小説を読んで頂き、ありがとうございます!錆兎の小説少ないですよね(笑)これからも面白いものを書けるように頑張ります!コメントありがとうございました(´∀`*) (2020年2月23日 0時) (レス) id: f2693a43aa (このIDを非表示/違反報告)
- はじめまして!コメント失礼します。私錆兎が好きで、小説読んでるんですけど少なくて…面白いのに出会えて嬉しいです!これからも頑張って下さい! (2020年2月21日 2時) (レス) id: b0e039ba17 (このIDを非表示/違反報告)
凪暮(プロフ) - 愛さん» ご指摘ありがとうございます。もっと面白いものにできるよう、更新頑張りますね! (2020年2月10日 12時) (レス) id: 8a0d382133 (このIDを非表示/違反報告)
- 文が淡々としてる気がします。でも面白いので、頑張って下さい (2020年2月10日 2時) (レス) id: f2693a43aa (このIDを非表示/違反報告)
凪暮(プロフ) - せなさん» ありがとうございます!更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします! (2020年2月8日 15時) (レス) id: 8a0d382133 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:凪暮 | 作者ホームページ:https://twitter.com/yume_nlmosuki  
作成日時:2020年2月1日 15時

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