処遇 ページ13
「さて、君の事だけれどね。鴉や娘たちから、大体の事は聞いている。森の一角が光に包まれたと思ったら、君がその恰好で立っていた……とね」
「はい、その通りです。気が付いたら森の中に居ました。」
鴉というのは、先程隊員にあてがわれていた鎹鴉のことだろうか。娘とはあの白髪の童女達?
御館様にあまり似ていなかったから、お母さん似なのだろうと、私は勝手に納得した。
「そうか……うん。じゃあ、君の事について聞かせてもらえる? 君はどこから来たのかな」
私は深呼吸をして、唾をごくりと飲み込んだ。
「はい。……私はまず、この時代の人間ではありません。今から百年以上先の時代から来ました」
「うん。それは信じるよ。君の恰好は生きてきて見たことが無いからね」
ほう、と息を吐いた。よかった。この様子なら、私の発言の大方を信じてもらえるだろう。
ありがとうございます、とお礼を告げ、私は自身のプロフィールを続けて言う。
「年は十四。東京都台東区の浅草に住んでいました。公立の中学校に通い、テニス部と陸上部に所属し練習に励む……特別なことは何一つ無い、どこにでも居る中学生です。」
「中学生? 君は女の子だけれど、中学校に通っているのかい?」
この時代からすれば、当たり前の疑問だろう。確か……この時代は、中学校は男の子しか通っていなかった筈だ。
「私が生活していた時代では、男女問わず、六歳か七歳になると学校に通う事が国で定められているのです。六年間小学校に通うと、次は中学校で三年間学びます。これも国から課せられた義務です」
出来るだけ分かりやすく、言葉を選んで伝える。御館様は感心した様子で、君の話は興味深いねと笑った。
私はこの後も、できるだけ事細かに話した。御館様は時折驚き、ほほ笑み、頷いて、真剣に私の話を聞いてくださった。
楽しそうに聞いて下さるものだから、調子に乗ってべらべらと喋ってしまう。
あらかた説明し終わって我に返ると、私ははしたない真似をしたのではないか、と恥ずかしくなった。
「ありがとう、Aさん。君と話していて楽しかったよ。」
だから何も恥じることは無いと語りかけてくださった。なんて優しい人なんだ。
「話を聞いていると、君は日頃から体を動かしているそうだから……そうだね、『隠』になるのはどうだろうか」
「『隠』、ですか?」
「ああ。君を運んできた人達がいただろう。その人たちの事だよ」
御館様は変わらずほほ笑んでいる。私は即断した。
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凪暮(プロフ) - 笹さん» はじめまして!小説を読んで頂き、ありがとうございます!錆兎の小説少ないですよね(笑)これからも面白いものを書けるように頑張ります!コメントありがとうございました(´∀`*) (2020年2月23日 0時) (レス) id: f2693a43aa (このIDを非表示/違反報告)
笹 - はじめまして!コメント失礼します。私錆兎が好きで、小説読んでるんですけど少なくて…面白いのに出会えて嬉しいです!これからも頑張って下さい! (2020年2月21日 2時) (レス) id: b0e039ba17 (このIDを非表示/違反報告)
凪暮(プロフ) - 愛さん» ご指摘ありがとうございます。もっと面白いものにできるよう、更新頑張りますね! (2020年2月10日 12時) (レス) id: 8a0d382133 (このIDを非表示/違反報告)
愛 - 文が淡々としてる気がします。でも面白いので、頑張って下さい (2020年2月10日 2時) (レス) id: f2693a43aa (このIDを非表示/違反報告)
凪暮(プロフ) - せなさん» ありがとうございます!更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします! (2020年2月8日 15時) (レス) id: 8a0d382133 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凪暮 | 作者ホームページ:https://twitter.com/yume_nlmosuki
作成日時:2020年2月1日 15時