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自身を見つめる少女2人の瞳は、夏油傑の心をぐちゃぐちゃにするのに十分だった。
檻から出した2人を同伴していたAに預け、1人で突き進む。
『まって、!夏油!ねぇ!』という同期の牽制なんて無視し、村人の居る場所へ向かった。
呪術は非術師を守るためにあるだなんて言っていた彼はもうどこにもいない。彼の瞳にはただ絶望と憎しみが混じった中に猿が映るだけだった。
夏「A、ごめんよ」
夏油が己から呪霊を取り出した瞬間、彼の後頭部に衝撃が走った。
何事かと後ろを振り向けば彼はドンッと強い力でAに押し倒されてしまった。
夏「…A、どいてくれ」
『やだ!絶ッ対どかない!』
夏油に馬乗りになっているA。いつの間にか夏油の腕は彼女の結界に覆われていた。
Aの目を見ないまま夏油は言葉を紡ぐ。
夏「…A、あいつらは猿だ。人間じゃない。君だってあの子たちを見ただろう?だから、早く『夏油!わたしの、ッ目を見てっ!!』…」
彼女の瞳は溜まった涙でブレていた。それでも真っ直ぐと夏油の目を見て、瞬きすらしていない。
ポタポタと夏油の顔に留まり切れなかった涙が落ちる。それでも彼女は目を逸らしはしなかった。
『…帰ろう。ねぇ、帰ろうよ。この子たちを連れて。もう、夏油は頑張ったから…ッ一緒に高専帰ろう…?全部背負わなくていいの…だからッもう、ひとりにならないで、』
前々からAは夏油の調子を気にかけていた。灰原が任務で亡くなってから、いや、もっと前からおかしいと思っていた。
夏油が呪霊を飲み込むたびに辛い顔をしているのをAは知っていた。だから任務が終わるといつも飲み物や飴を何気なく配ったりしていたものだ。
それでも彼の心を救えない。でも救わなくては、その一心で彼女は今彼を拘束している。
『今まで力になれなくてごめんなさい、私は強くないから…ッ、でも、!…夏油が居なくなるくらいならッ4人で居られなくなるなら、今、夏油の腕をへし折ってでも連れて帰るよ…っ』
ぐ、と結界が強まる感覚に彼女の本気がうかがえる。
徐々に夏油の肩の力が抜けていった。ふと後方を見ると、少女2人がAの包囲結界に包まれ不思議そうに周りを見回している。
…すごく、暖かそうだった。
夏「…A」
『うん、なに?』
夏「今日の夕飯は、なんだっけ」
『…ッ、帰って聞きに行こうね』
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ナミ - コメント失礼します。すごく面白いです!夢主ちゃん可愛すぎます!更新頑張ってください(^^) (2023年3月29日 10時) (レス) @page5 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 一言でいうと最高です。大好きです。 (2023年1月24日 21時) (レス) @page5 id: 64fcbccf7d (このIDを非表示/違反報告)
紡木かなえ(プロフ) - なつさん» ありがとうございます!私の作品欄から見つからなければ、もしかしたらフィルターがかかっているかもしれません!ブラウザ版からログインして設定を確認してみてください!!早く更新できるよう頑張ります! (2022年4月4日 23時) (レス) id: 4fb629dc44 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 初コメ失礼します!前編から見ていたのですが、続編だということでめちゃくちゃ楽しみにしていました!ところで質問なのですが、前編のスピンオフ作品見たいのですが、どこにも作品があらず。。。どうすれば見れるのでしょうか、? (2022年3月28日 0時) (レス) id: f8c41f4d35 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - 続編おめでとうございます! (2022年3月12日 23時) (レス) @page5 id: 98cd497361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紡木かなえ | 作成日時:2022年3月11日 23時