遡行軍のスパイの話 (ページ10)

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10話ページ10

考え込んでいる私の様子がショックを受けているように思えたのか、燭台切さんが
大丈夫だと、声をかける。

「見つからなければ大丈夫だから。君も気をつけて行動してさ… ね？」
「…はい。」
「もし見つかって酷い目に遭わされても契約を結ばれれば君は逆らえないし俺達も助けられない。」
「ちょっと、鶴さん！言い方！」
「…分かりました、気をつけます。」

無論、契約の対処法は考えてあったが、
さっき思った審神者に姿を現わす計画は見直さざるを得なかった。

徐々に重くなっていく空気を散らすかのようにピーと炊き上がった音が調理場に鳴り響く。
一斉に発信源である炊飯器に視線が集まった。
気まずいがとにかく、まず炊いたものをなんとかしないと。
私は戸棚からお皿を出してそこにご飯を盛り付けた始めた。

「米を炊いたの？」

作業していた私の手元を燭台切さんが覗き込んでくる。

「はい。倉庫に米しか無かったですし。食事というものに興味があったんです。」
「へぇ、そうなんだ。僕の前の主も料理をする人だったんだ。やっぱり君も前の主の影響？」

ピタリと一瞬自分の動きが止まった。ハッとして再開するも、動揺しているのか心臓は張り裂けそうなくらい音を立てる。

「…い…え、前の主は関係ないと思います。」

小さく否定の言葉を絞り出した。

懐かしそうに語られた燭台切さんの元主。それはつまり伊達政宗のことだろう。
この人(刀)は歴史に名を残す偉人に使われたんだな。
自分の中でモヤモヤとしたものが蠢いた気がして慌てて頭を振って作業に集中した。