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8話 ページ8

鶴丸さんの後ろを歩きながらもキョロキョロと周囲を見回す。 廊下にも庭にも誰もいない。鳥の声さえも聞こえず静かだった。
どこの部屋も障子はピタリと閉められていて
中は見えない。本当にいるのかとさえ思ってしまう。私は足を止めて振り返った。
私がいた空き部屋は審神者部屋とは正反対だと言っていたから、向こうに見える一番端の部屋がそうなのだろうか。
この屋敷はとても広い為、まずは場所を知らないと何にも出来ない。
焦ることはないが、後の状況に応じては
いっそのこと審神者の前に姿を現して、当初の計画通り刀剣女士として審神者と関わり隙を盗む方が良いのかもしれないと思った。

後ろを付いてきていないことに気づいた鶴丸さんが声をかける。
私は何でもない と、首を振って歩き出した。


「…うわぁ…」
と、言いかけて口を塞ぐ。
うん、想像はしていた。
調理場は使ってないなら当然ボロくなっている。
気にしたって仕方ない。
しかし、ボロい割には電子機器が設置されてあり、和風な部屋では違和感を感じさせるくらい未来的だ。
私は隣の倉庫を覗いてみた。
……米俵。
調味料は塩と砂糖くらいだ。
これは、ご飯しか炊けないな。

「ご飯炊いてもいいですか?」

隣で様子を見ていた鶴丸さんに尋ねると
「君はそれの使い方が分かるのか?」
と、不思議そうに見つめてきた。

「…いや、まぁ。 表示されているボタン押せばいいかと…思いまして。」
「…そうか」
適当に言い訳を言ってしまったが納得はしてくれたらしい。

流石に一人では無理なので米俵を運ぶのを手伝ってもらい 水で洗って炊飯器にセットした。
そして、ピッとスタートボタンを押す。
作業が終わり、あとは待つだけだと
一息ついた時、ふと頭に 働かざるもの食うべからず という言葉がよぎった。

「…今更言うのもあれですけど、勝手に使っても良かったんですかね。私、何にも働いていないのに…。」
「構わんぞ。 俺達は食べないし、審神者は部屋で作ってるからな。」
「…え、俺達って、他の方達も食べてないんですか?」

思わず聞き返したがよく考えれば分かったことだ。
本丸開始時から材料がそのままだというなら当然、誰も食べていないことになる。

「俺達には必要ないだろう。」
「…でも、審神者部屋に料理する場所があるんですよね? なら、この調理場は刀剣用なのでは?」
「材料は最初は支給されるが、それ以降は金がかかる。続けられない習慣をつける必要ない。」
「…そうですか…」

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サザンカ - 凄く面白かったです!!!!!つい見入ってしまいました。続編などがあるのでしたら楽しみにしています! (2019年10月11日 19時) (レス) id: 381a12205a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:杏子メロンパン | 作成日時:2019年6月8日 18時

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