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49話 ページ49

見習いはへぇ、と呟いて辺りを見回す。
遠くの方に見える畑は終わりが見えず何処までも続いているかのようだ。
それに、その近くにある馬小屋も
審神者学校で見た写真より何倍も大きい。
自分もこのくらい大きく出来たらいいな、と思わずにはいられなかった。

その時、ふと畑から少し離れた林の中に
杮葺が見えた。あんな所に屋根が…。
何だろうか。

前を歩く燭台切を引き止めて見習いは尋ねた。

「あの小屋は何ですか? この本丸や畑からも離れているようですが」

「……あぁ、あの小屋?あれは物置だよ」

「物置? 随分と遠くにあるんですね。運ぶの大変じゃないですか?」
「………」

つい思ったことを口にしてしまい、反応が返ってこないことに見習いは少し焦る。
しまった。本丸を探るような言い方をされて良い顔をするわけがない。

「すみません! しつこく聞いてしまって」
慌てて謝ると燭台切は首を振った。

「いや、良いんだよ。審神者が捨てられない性格でね。僕等も物だから、強く捨てろとも言えなくて、仕方なくあそこに置いてるんだ。」
「なるほど!」

確かに付喪神ならそういうこともあるだろう。見習いは納得した。

そこに
「燭台切殿」
と、後ろから声がかかった。
思わず振り向くと、なんとも美しい顔の方が立っている。やはり、刀剣男士は美形の集まりだ。

「一期君、どうしたの?」

「いえ、こちらは、見習いの方ですか?」
スッと琥珀色の美しい瞳を向けらて見習いは硬直する。

「そうだよ。本丸の研修だって。」

「そうでしたか。」
そう言って彼は王子様のような微笑みを浮かべた。

「ところで、鶴丸殿を見ませんでしたか?」
「いや、見ていないよ。でも、多分…」

「…はぁ。 彼には困りましたね。非番だからといって、あまり羽目を外しすぎないで頂きたいのですが。」

「仕方ないよ。それに、一期君だってそう変わらないでしょ」

「…。私はあそこまで鬼畜ではありません。
鶴丸殿なんて殆ど部屋に戻らないじゃないですか」

「……。それは鶴さんに言ってよ」

訳の分からない二人の会話に置いてきぼりにされた見習いはこてりと首を傾げた。
視界に入る遠くの林の中には屋根だけが飛び出し、何故かそこだけ異様な空気を醸し出している。

見習いは顔を上げて空を見上げた。

遠くの方から灰色の雲がこちらに向かってきている。

これはしばらくしたら、一雨来そうである。

そう思った時にはもう見習いの頭からは小屋の存在は消え失せていた。

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サザンカ - 凄く面白かったです!!!!!つい見入ってしまいました。続編などがあるのでしたら楽しみにしています! (2019年10月11日 19時) (レス) id: 381a12205a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:杏子メロンパン | 作成日時:2019年6月8日 18時

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