38話 ページ38
輝く金色が綺麗すぎて私は何故か目が反らせない。
「 俺は君だけに背負わせるつもりはないぞ。
君が堕ちたら俺も君に着いて行こう。君が折れれば俺も後を追う。」
ふいに、鶴丸さんがそんなことを言い出す。
「なっ! だ、駄目ですよ。」
「俺が勝手に決めたことだ。君に迷惑はかけんさ。 着いてきたとしても無視すればいいだけの話だ」
「そ、そういう問題じゃないんです。
貴方はこの本丸の刀剣達にとって必要不可欠な存在なんですよ。それなのに」
「俺にとっては君が必要不可欠だ」
さらりと言われた言葉に思わず目を見開いた。
驚いて、パクパクと口を開け閉めするだけで言葉が出てこない。
色々困ることや、言ってやりたいことが山ほどあるというのに、 喉で止まってしまい声にならないのだ。
固まってしまった私に鶴丸さんは どうだ?驚いたか?と声をかけた。
胸の奥から何か熱いものが込み上げてくる。
どうしようもない、抑えきれない感情が雫となって
ポタっと私の膝に落ちた。
「君、泣いているのか!?」
オロオロと慌てて鶴丸さんが私の目元に手をやる。
私はその手を取って顔を近づけておでこにあてた。
ビクッと彼が跳ねるのを感じたが、気にせず強く握った。
「…うっ…くっ…」
溢れる涙は止まることを知らずに落ちていく。鶴丸さんは私の頭を脆く壊れそうなものを扱うかのように撫でた。
彼は私が必要だと、言ってくれた。
俺には必要不可欠だと。
初めて言われた その言葉が胸に響く。
駄目だ。これは私が嫌悪すべき、最も抱いてはいけない感情だ。
でも、もし、あの時 そう言ってくれる人がいたら。
私を大事にしてくれる人が一人でもいたら。
こんな風にはならなかったかもしれない。
こんな誰かを騙す辛さなんて感じずに済んだのかもしれない。
人に愛された彼等を恨んだりもしなかったかもしれない。
全てはもう過ぎたことだ。もう、あの時には戻れない。
でも、私はその言葉を
あの時、あの場所で
人間から聞かせて欲しかったと思わずにはいられなかった。
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サザンカ - 凄く面白かったです!!!!!つい見入ってしまいました。続編などがあるのでしたら楽しみにしています! (2019年10月11日 19時) (レス) id: 381a12205a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏子メロンパン | 作成日時:2019年6月8日 18時