遡行軍のスパイの話 (ページ36)

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36話ページ36

その後、私は準備を始めた。
当然、周りの刀剣達に説明を求められたが
私は何も言わなかった。

押入れに閉じこもり端末を開く。
そして差し込んだUSBに
この本丸の状況を伝えられる写真や審神者の不正の記録、録音した音声のデータを入れた。
USBは一つしか持って来ていない。
これを政府に渡してしまえば、私は手ぶらで
本拠地に帰ることになる。
どうなるかなんて想像もしたくないが、
一度決めた私は揺らぐことはなかった。

データを渡された政府がどう動くか。

残り二日。

私は戦闘前のように頭が冴えて
眠れなかった。

ーーーーーーー

やけに長く感じた夜が明け、早朝、
一期さんと鶴丸さんが私の部屋に現れた。

私はハンカチで包んだそれを渡す。

「絶対に中身を見ないで下さい。見たら、この策は失敗します」

「……」

一期さんはこれが一体何になるんだと言いたげな目を向けたが、黙って受け取った。
鶴丸さんは何か言いたげな顔で私を見つめる。

「貴方達がこの本丸の希望になるんです」

そう言えば二人は顔を見合わせた後
コクリと頷いた。

ーーーーーーー

夕方、審神者と演練の部隊が帰還した。
結果が良かったのか審神者の足取りは軽い。
そんな審神者の後ろを歩く刀剣の様子を遠くから脇差の骨喰と鯰尾が伺っていた。
二人に気づいた一期一振が軽く頷く。

意味を理解した二人は顔を見合わせて一目散に駆けていった。