遡行軍のスパイの話 (ページ22)

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22話ページ22

「え、ちょっと…あの…」
正面から肩に頭をのせられ
突然距離が縮まったことに驚いてしまう。
しかし、鶴丸さんはそんなこと気にもせず
体重をかけてきた。

押し返そうと彼の肩に手を置くが
視界に捉えた安心したような顔に
力が抜けてしまった。

押し返さなければいけない。気を許してはいけない。分かってる。
それでも、身体が硬直したように動かなかった。

「すまない」
そう告げて鶴丸さんはゆっくり離れていく。

「…いえ、大丈夫です」

なんとなく気まずい空気が流れていた。

しかし、そんな空気も何かがこちらに近づいてくる気配で一瞬にして張り詰める。

私はバッと離れ膝を立てた。
鶴丸さんも感じたようで警戒するように身構えた。
ここで下手に動いて音を立ててはいけない。
鶴丸さんは声は出さず顔を押入れに向け
目線で私に訴えた。

コクリと頷いて
元々開いていた押入れの下の段に
ゆっくりと近づき中に入る。
その後、鶴丸さんがスッと戸を閉めた。

ドタドタと近づいてくる足音に暗闇の中息を飲む。

「鶴丸、鶴丸は何処にいる」

ビクリと身体が跳ねる。
聞こえた低い声は盗聴器から聞いていた
審神者の声と同じだった。
聞こえはしないかと心配になるほど心臓が音を立てる。
乱暴に部屋の襖が開かれた。

「ここにいたのか。」
「何か用か」

鶴丸さんはいたって普通に返答する。

「出陣だ。… ここは空き部屋の部屋だが何故ここにいる？」
「… 本丸内を移動するのに許可が必要なのか？」
「…… 。早く準備しろ」
鶴丸さんの答えに
審神者は不機嫌そうに言い放つ。

鶴丸さんが立ち上がり部屋を出ていく音が聞こえた。