今夜の雨は君の涙【逆先夏目】 (ページ13)

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side渉ページ13

渉「あなたの言いつけ通りに彼女に伝えてきましたよ。あなたの好きに生きてみてはどうかと」

「そう。ありがとう、渉」

渉「でも良かったのですか？手放すタイミングが私と入れ替わりだったので彼女はさぞかし心を痛めたのではないかと」

「どうだろうね。彼女が泣いたり笑ったりしているところは見たことがないし、なにより彼女は人なのかどうかも怪しいと使用人たちの間で噂になっているくらいだからね。例えば…機械とか？」

渉「なんと！機械である可能性が！！さすがは皇帝陛下でございますね！」

皇帝陛下……天祥院英智は少し微笑んでから続けた。

英智「僕はね、親のあやつり人形になるのが大嫌いなんだ。渉も知ってるよね？」

渉「ええ、もちろん！」

英智「あやつり人形でいる人生なんてつまらないとは思わないかい？僕に仕えるだけじゃなくてもっと素敵なことを見つけてほしいね」

渉「優しいですね」

英智「………可哀想じゃないか」

英智は窓の向こうに見える月を眺めながら呟いた。

英智「せっかく綺麗な子なんだから…。真っ白で…言葉も知らない。純粋な心で…。僕の手でこれ以上汚すことは罪だと思うんだ」

渉「彼女はそう思ってはいないようでしたけど？」

英智「親がそんな風にしたんだよ。真っ白で何もわからない子供を、言葉を教えるよりずっと先に…主に仕えるために生きていることを植え付けた」

渉「……」

英智「彼女の親権やら全ての権利はすべて僕が持っているのだから僕が彼女をどうしようと勝手だよね」

渉「だから手放したと？自由に生きてほしいから」

英智「そうだよ。僕には決められたルートしかないからね。まだ真っ白で心に穢れのない言葉も知らないような彼女が代わりに自由に生きてくれたらいいんじゃないかな？」

渉「まるで父親のようですね」

英智「ふふ、そう見えていたらいいね。彼女はいくら僕が感情や声を発することを教えても…覚えてくれなかったから。……渉の弟子であるあの子が教えてくれると嬉しいな」

渉「ふふふ…。楽しみですねぇ☆」

英智「…僕のことは早く忘れて…自分を大切に生きてほしいな…」