御指名は誰になさいますか？ (ページ30)

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私は暫くの間､
何も考えられずにいた｡

嘘をついてるとは思えなかった｡
実際､カズの個客の殆どは人妻だ｡
だけど…｡

何かが引っ掛かったけれど何かは分からないまま｡

2日後にLa tormentaを訪れた｡

｢申し訳ございません､和也さん今席を外していて…｣
｢そう､じゃあ少し待っていても良いかしら｣
｢勿論です､どうぞこちらへ｣

黒服の…西畑君と言った気がする｡
彼に案内されて座った座席からはカズが見えた｡
でも今日は目配せもしてくれない｡

そんなに私の離婚宣言はいけない事なのか？
そう思っていた時だった｡

｢五十嵐様､ここ､よろしいですか？｣
｢貴方…雅紀くん､だったかしら｣
｢覚えてくれてるなんて光栄です｡｣

カズが以前言っていた｡
｢俺と雅紀は幼馴染なんだよねぇ｣
だから私は雅紀くんを知っていたのだ｡

｢ごめんなさい､カズが｣
｢え？どうして貴方が謝るの？｣
｢…全部知ってるから｡｣
｢全部って…？｣