御指名は誰になさいますか？ (ページ11)

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今日院長に呼ばれた｡

何かあったか…と
思い巡らせたが何も思い浮かばない｡

｢失礼致します｣
｢おお､座りなさい｡良い話だよ｣

その話､とは私を部長にするという事だ｡
執刀は減る｡
会議や学会などが増える｡
秘書をつけなさいと言われた｡

そんな話を私は翔にした｡

そもそも疑問だったのだ｡
どんな職業でも就けたはずの翔がﾎｽﾄである事｡

何でも良かったのかもしれない｡
何か事情があるのかもしれない｡

だけど私は翔に秘書にならないかと問うた｡

彼の核心を聞ける気がしたから｡

｢……申し訳ありませんが､お断り致します｡｣

深々と頭を下げられた｡

｢…敢えて聞くわ､どうして？｣

私を見つめた翔の瞳がやけに冷たくて
聞いた事を後悔した｡
でも､もう遅い｡

｢…接客が､好きだからです｣

私が言葉を返そうとした時､
ちょうど黒服のまっすーくんが呼びに来た｡

｢それでは､失礼致します｡｣

去って行く背中に涙がこみ上げた｡