半年前の証明 ページ2
嫌になる｡
何が企画部の飲み会だよ｡
企画部の女性だけが集まった飲み会｡
正直､帰りたくて仕方なかった｡
だけど､幹事の斉藤に絡まれて2次会行き決定｡
｢私､良いお店知ってるの！行きましょう！！｣
斉藤の一言でついて行ったのは私を含め､4人｡
｢斉藤さん､どんなお店なんですか？｣
｢行ったら分かるわよ､五十嵐ちゃん｣
……なるほど､確かに着いた瞬間に分かった｡
｢ﾎｽﾄ…ｸﾗﾌﾞ…ですよね？｣
｢そうなの！楽しいわよ〜〜〜！！｣
この時点で､私と斉藤だけになってしまった｡
後2人はﾀﾞｯｼｭで逃亡｡
私だって､斉藤に腕さえ掴まれてなかったら…！
｢いらっしゃいませ､斉藤様｡｣
独身斉藤､しょっちゅう通ってるな？
と思わせるぐらい､ｽﾑｰｽﾞに店内に案内される｡
｢五十嵐ちゃん､初めて？｣
｢え？えぇ…そうですね…｣
｢じゃあ今日は奢ってあげるわ｡｣
独身斉藤は自分の指名を済ませた後､
｢この子に､雅紀を｡｣
それだけ言うと､黒服が下がって
入れ替わる様にｽｰﾂを着た男が2人来た｡
｢雅紀､この子､初めてなのよ｡宜しくね？｣
斉藤はそれだけ言うと､
自分の指名との世界へ入っていった｡
｢初めまして､雅紀です｣
にこやかに挨拶をして
私の隣に座った彼を見ながら
私の頭の奥で警鐘が鳴り響いた｡
この人､きっと私を駄目にする…｡
直感だった｡
｢あの､私…｣
｢緊張する？｣
｢そうじゃなくて…｣
｢俺､また来てねって言わないから安心して？｣
私の目を覗き込んでから続ける｡
｢だって､君､OLさんでしょう？｣
そのまま今度はお酒を慣れた手つきで注ぐ｡
｢無理して会いに来てくれる人もいるけど…｣
｢え？無理して？｣
｢うん｡だけど､それは申し訳なくなっちゃうからさ｣
目尻に思いっきり笑い皺を作った彼は
私にｸﾞﾗｽを渡した｡
｢けど､今日は斉藤さんの奢りでしょ？
だから､たくさん楽しんで帰ってね｣
かちん､と頭の奥でｽｲｯﾁが押された音がした｡
｢そうだ､お名前は？｣
これが､私と雅紀の出会い｡
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作者名：きょん | 作成日時：2017年11月9日 22時
