Life goes on. (ページ21)

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21＿樹side ページ21

毎日俺の側を離れずに世話をしてくれる慎太郎。

俺が夜中に泣いて眠れなかった時も、発作が出た時も、あいつはいつも大丈夫って言ってくれた。

大丈夫って何？

いつになったら治んの？

弱い自分にうんざりして慎太郎に当たってまた落ち込んで。

それでも絶対大丈夫って言って抱き締めてくれる。

だから俺も信じてみようと思った。

慎太郎の言葉を。

慎「俺も付いていくから」

退院してからすぐに実家に行って父さんと話をする約束をした。

慎「苦しくなったらちゃんと言ってよ？」

「うん、分かってる」

電車の中から見える懐かしい景色に段々と鼓動が速くなってくる。

慎「樹」

「ん？」

慎「キスしていい？」

「え、何で今？」

慎「したくなった」

いや、ここじゃ無理だろ。

慎「じゃあ、今だけは俺の目見て」

そう言って、鼻が付くか付かないか位の距離でお互い見つめ合う。

慎「…あ、表情柔らかくなった」

あぁ俺が緊張してたのバレてんのか。

「……ありがと」

慎「どういたしまして」

ふふっと微笑む無邪気な笑顔。

「慎太郎、終わったらさ……」

慎「終わったら？」

"俺の全部、お前にあげたい"

なんて言えるはずもなく。

「…あー…キスは…していいよ」

慎「うん、じゃあ頑張ろう」

アナウンスが流れると電車から降りて目的地へ向かう。

俺が住んでたアパートに着いた。
玄関の前で深呼吸してインターホンを押した。

扉が開く音に身体が強張る。

父「おかえり、樹」

ゆっくりと父さんの顔を見ると、少し柔らかくなったような感じがして前よりも若干痩せていた。

こんなにちゃんと顔を見たのは久しぶりだ。

父「父さん、お前が来るって聞いて嬉しかった。中も片付けたから」

あんなにぐちゃぐちゃに散らかってた家の中が綺麗に整理されていた。

それでも隠し切れなかった壁の凹みや小さな血痕が目に付く。

慎「樹、嫌だったら別の場所に…」

「大丈夫」

逃げてちゃ駄目だ。

重たい足をゆっくりと動かして中へ進む。

決着を付けないと昔の俺が一生救われないままだ。