恋焦がれる思いは行き場を探す【緑谷出久】【僕のヒーローアカデミア】 (ページ43)

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望まぬ客人ページ43

「爆豪に期待はしていなかったが、まぁ、なんだ。
　落ち込むことはねぇぞ」

「…」

　そうだね。そうだ。豚の着ぐるみが似合うと遠まわしに言われたことなど忘れよう。

　改めてまだ見ていない服が並んでいる場所を回っているが、こういうものが好み。という具体的なものがないため、なかなか決められない。

　ゆうに一時間はここで過ごしているだろう。

　もちろんこれに付き合わされている轟さんの身を考えれば、とてつもなく申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが、今ここで帰られてしまうと、ディナーがとんでもない結末に終わる確率が上がってしまう。

　それだけは阻止しなくてはならない。

　本当に申し訳ない。だが帰すわけにはいかないのだ。

「離しやがれっ!!糞が!!」

　そんな声は私のすぐ後ろから聞こえたはずだ。

　その言葉の発し方に聞き覚えがあった。が、それすらも確認する余地などないぐらいに、背中に大きな衝撃が走り、私は前の目にりなった。

「はい!?」

　何事だ。私はギリギリのところで持ちこたえると、背中に襲いかかった誰かを見ようと後ろを振り向いた。

　お決まりのパターンが到来したかのような気持ちになる。

　その原因は、私の背中にぶつかってきた人物への驚きではなく、そのお荷物となっている方の人間だ。

「爆豪勝己…」

　驚きのあまり、私はフルネームで言ってしまったが、当の本人はそんなこと耳に入っているわけもなく、わーわー喚き散らし、店内の客から痛い目で見られる。

　まずは私の背中に突撃してきたお茶子ちゃんを抱き抱えた。

　彼女は目がぐるぐると回っているようで、どうしてそうなったのだろうという私の疑問は隠せない。

「何があったの」

「ご、ごめん。Aちゃんがデクくんとのデートで服を聞いてきたという情報を入手し、爆豪くんに聞いたら豚の着ぐるみが似合うなんてアドバイスしたことを聞いて、謝りに連れてきたらこの有様…で」

「いやいやそんなことしなくてもいいのに」

　これが世に言うお節介というやつなのか。本当にいずくくんの周りの人は個性的な性格を持った人達ばかりだ。

「全部てめぇのせいだ死ね!とっとと死んで死ね!!」

　半永久的に死ねを私に対して連呼している爆豪勝己。それ自体はなんら痛くも痒くもないのだが、それ以前に大声で喚き散らされると、店から追い出されそうだ。

　このうるさい口をなんとかして塞がなければ、デート云々以前に行くことすらままならない状態になる。