謝罪と否定 ページ40
「その、あの時感情的になりすぎて、事実を憶測で固めて決めた言い方して、ごめ」
「言わないで」
「え?」
「貴方は何も悪くないの。悪いのは私。
かといってただ自虐してるわけではないの。
妄想癖みたいな感じで、私は勝手に自分の中で決めつけて、それで貴方を知らないあいだに傷つけていた。
今までの、私の不行儀を含めて、貴方の謝罪の言葉を私が受け取る資格なんてない」
「そ、そんな深く、深刻に考えなくても…」
「我が儘なんだよ。私は。
だからさ、しっかりと自分で納得の行く結果で終わりたいの」
自身の両手を合わせて胸に当てる。
今までの私は、自分の思っていることが全て正しいと思っていて、周りを見ずに行動考察してきた。
それが間違っているという自覚を、ここ最近気づかされた。
昔はこうじゃなかった。なんて思わない。生きている中で、私は確かに成長している。
その結果が悪いとは、今は思わない。
それがあったから、今の私がいて、今の現状に辿りつけた。
「今まで、本当にごめんなさい。
私は自身しか見えていなくて、貴方を見ているようで見ていなかった。
気づいたのはこんなに遅くて、今もまだそれを改善できたとは言えない。
私なんかよりも、他にいい人はいる。資産家の令嬢や、外国の有名な美人。私なんか、この世界の中で優れている人間とは程遠くて、貴方とは、本当は出会うことすら許されなかった存在かもしれない。
それでもなお、私はいずく君の傍にいさせて頂いても飽き足らず、図うずうしいお願いを今からします。
私と、付き合ってください」
「…」
「唐突で、まとまりがなくてごめんなさい。
でも、今言わなきゃ駄目だと思った。
一度言いそびれたら、もう二度と貴方に言えないと思ったの」
引かれてしまうのは重々承知の上だ。
もちろん、断られるかもしれない。
だからどうしたというのだ。
今の現状は付き合っているとは言い難い状態で、そんな関係をダラダラと続けていたところで、お互い何も成長しない。
踏み出さないといけない。関係が壊れることを恐れていたら、何一つできないから。
「君のそういうところが大好きだよ」
ふわりと衣類洗剤の香りが広がった。
目には見えないもので、私は包まれる。
人肌の温度が衣服を通してほんのり暖かく、私に伝わっている。
背中に回された手を拒むことはせず、それと同じように、私も手をまわす。
「ありがとう」
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作者名：雪飴 | 作者ホームページ：https://twitter.com/_kz_0
作成日時：2017年7月24日 0時
