恋焦がれる思いは行き場を探す【緑谷出久】【僕のヒーローアカデミア】 (ページ39)

今日:17 hit、昨日:4 hit、合計:26,035 hit

金銭感覚ページ39

水無瀬さんの声に私は我に返るかの如く、すぐに体制を持ち直す。

　いずく君は手を離すと、目線を私から逸らした。

　なんで逸らすの。なんて思うより、彼の行動に感謝をする。

　顔が真っ赤っかのまま、顔を見つめ合うなんてできない。

「すいません。私は爆豪さんが今しがた到着したとのことですので下に向かいます。
　その間、こちらの部屋でお待ちになってください」

「あ、はい…」

　そうか。かっちゃんも来るのだな。すっかり忘れていた。

　まぁ実際彼女からそのことを告げられるまでは、私は彼が来ることなど知りもしなかっただろうが。

　しかし、そうならこの場に来るときなぜ私と一緒に来なかったのだろう。

　気を効かせた?。いやまさか。彼がそれほどまでの気遣いができる人間ではない。

　こういう断定の仕方は良くないのかもしれないが、あの爆豪勝己という人間だ。

　そうそう人に気を効かせた行動ができるとも思えない。かといって、私は彼の言葉で今こうしているわけだが、それに関していえば、気遣いをされた、というべきなのだろうか?

　色々思ううちはあるが、今更あれこれ考えたところで、私の中の彼の評価はちょっとしか変わらない。

　私は水無瀬さんが指定した部屋のドアノブをひねると、扉を押して開く。

　中は普通の談話室なのだが、素人目にはわからないほどの高級感がある。

　ソファに腰を下ろそうとしたとき、このソファ、まさかウン十万するのでは?

　なんて推測が脳裏をかすめたが、そんな真実を求めたところで誰も得なんかしない。気にせず座ろう。

　最終的にはソファに腰を下ろしたが、なぜだろう。なぜいずく君は私の隣に座ったのだろう。

　彼は私とは違い、普通に、ごく普通に座った。

　抵抗というものがないのか?いや、彼の年収からすれば、このぐらいはどうってことないのか!?

　なぜかこのようば場所で金の、年収の差をしみじみと感じさせられるとは…。

「はぁ」

　やっぱりお金って大事よねぇ。

「ねぇ」

「はいっ!?」

　一息ついた瞬間、隣に座っているいずく君に話しかけられた私はなんともみっともない声を出してしまった。

　心臓が一回どくんと大きく跳ね上がり、顔をギコギコと機械のようにぎこちなく彼の方へ向ける。

「ど、どしたの？」

　驚いた反動かろれつが回らない。それだけならともかく妙に顔が暖かくなる。

　別に照れているわけではないのだ。だが、傍から見たら私は照れている。と認識されそうだ。