恋焦がれる思いは行き場を探す【緑谷出久】【僕のヒーローアカデミア】 (ページ35)

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見せられないページ35

床に座り込み、壁にもたれる。

　誰もいない、電気も点っていない事務所の入口で、私は静かに泣く。

　こんな姿、誰かに見られる前に、泣き止まなくては。

　そう何度も言い聞かせて、涙を拭って、拭って。

「ど…して」

　涙は止まらない。

　後悔と、悔しさと、惨めさと、いろんなものひっくるめた今までの感情が爆発した気がする。

　膝を抱えて、視線は天井。

　下を向いているから涙が出るんだ。上を向けば、涙は収まる。

　そうだ、上を向こう。後悔ばかりしたって意味なんかない。

　だから、だからっ。必死に言い聞かせた。

　頬に伝ってひと雫、ふた雫。それでも、目からは自然と溢れる。

　その時だ。ガタッと何かが近くで落ちた。

　それに驚き、私は涙を一気に拭う。そして音のした方向へ目をやる。

　暗いけれども、外の明かりで見えないほどではない。

　誰かがいる。皆回りに行っているはずだ。ヴィラン?

　ゆっくりと立ち上がり、目を凝らす。

「帰ってきやがったと思ったら、早々泣いてうずくまるとか…。
　ぶっせぇ顔が余計ブスくなってんじゃねぇか。ブス」

「か…ちゃん…なんで」

「あぁ?飯くい終わったから今から見回りに行くところなんだよ。
　文句あっか?」

「文句、ないけど」

　彼は入口の電気を躊躇なく灯す。

　いきなりの明るさに私は目を細めた。そして今の私の顔が明かりの元にさらされていると気づくと、両手で自分の顔を覆った。

　どうして電気を灯した。こういう時は空気を読んで何も言わず、そして電気をともさずに出て行く場面ではないのか。

　だけど、彼にそんなことできるわけはなかった。

「ひっでえ顔じゃねぇか。なんだぁ?デクと別れたとかか?」

「どうして…そういう酷いこと言えるの」

「図星…?ハッハッハ!ざまぁねぇなブス!」

　そんな彼の言葉に、私は何も言えない。

　ざまぁねぇな。その通りだ。自分の結果が招いたことだ。

　両手で顔を覆っているうちに、目からは出し切ったはずの涙がまた少しだけ流れる。

　泣いてるなんて知られたくない。それよりも、この赤く晴れ上がった目元がある顔すら見られたくない。

　早く私を一人にして欲しい。