ありえない ページ31
彼の怒鳴り散らす声、後輩の唖然とした顔、それらを華麗に無視し、私は鞄を強く握り事務所を走って飛び出した。
幸いにもかっちゃんは追いかけては来なかった。流石にデートと言っただけあるか。
これで追いかけてきたら、どれほど空気が読めない人間なのだろうと、彼の評価を十段階程度下げる気持ちでいた。
あの後輩と、かっちゃんと同じ部屋に残してきたことには少々歯がゆい気持ちはあるが、それを気にしては私はいずく君とデートはできない。
待っててねいずく君!今すぐ行くよ!!。
「うおおお!」
＿＿
「……」
あぁぁ。数分前の私をぶん殴りたい。そういう言葉は今使うべきだ。
シャンデリアがキラキラと輝く、まさに洒落た店。
まさかここまでの豪華な場所だとは知らなかった…。
いや、知らなかったで済む話ではない。
今の私の服装は普段着を少しだけ清楚にしただけの、一般人の服装。
周りには明らかにヒーローっぽい人たちがたくさん話を繰り広げており、しかし皆スーツ姿やドレスでぴしっと決めている。
なんなんだ。今日は何か大きなパーテイでも開かれていたのか?
しかし私は何も聞かされてない…。
履き慣れないヒールの靴を絨毯にこすらせつつ、最上階へのエレベーターへと乗り込む。
「ふぅ…」
丁度誰も乗っていないエレベーターに乗り込めたのは幸運だ。
屋上表記のボタンを押すと、扉が閉まる。
そこで私は一息。
「まさか、いや絶対かっちゃんだろう」
私は基本こういう招待などを放棄しているから、事務所の誰かから言伝で聞いて参加の有無を伝えるのだが、かっちゃんが行きたくないという場合は基本私にも連絡が行き届かない場合が多い。
これまで数回そういうことがあり、私とかっちゃんは喧嘩をしたのだが…。
今回の件で、他人任せにするのはやめようと思う。
そんなことをぶつぶつと考えていると、エレベーターがガタンッと止まる。
「あれ?まだ屋上じゃ…ぶっ!!」
明らかに屋上まではまだ階があるのに。と思いつつ、開いたドアを閉めようとボタンを押そうとしたとき、扉の先にいた人物に私は衝撃のあまり吹き出してしまった。
え？嘘でしょ？マジで？
「え、んで、ヴぁー」
No,2ヒーロー、エンデヴァー。
ぴしっとしたスーツに身を包みつつも、堂々した態度と威圧感は変わらずそのまま。
でもなんでこんなところに大物ヒーローがいるんだよ…。
それだけじゃない。親子でだ。
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作者名：雪飴 | 作者ホームページ：https://twitter.com/_kz_0
作成日時：2017年7月24日 0時
