寄生虫 ページ26
「こっち見ろ」
「っ…むり」
彼は私の両肩を掴むと、自分の方向に向ける。
抵抗する力もでなくて、ただ私は顔を下に向けるしかできない。
お願いだから、今は、何も言わないで欲しい。
そんな私の願いも、言葉にしなければ伝わらないわけで、結局私の目は轟さんの目とあった。
「ひどい顔だな」
なんて薄く笑う彼に少しだけむかっとする。
無理とは言った。が、やめてとは言わなかった。
やめて。そういえばよかったなぁ。
「だから…むりだって…言ったのに」
「だけどまだ泣いてない」
「っ…」
「しっかりと現実を見ろ。目を逸らすな。自分のしたことから逃げるな。
涙は上を向けば流れない」
「嘘つき」
涙は上を向けば流れない?
私の顔は彼により無理やり上げられているが、もう涙は頬を伝っている。
嘘つきだな。轟さんは。
いくら上を向いたところで、涙はすぐに乾燥して流れないわけない。
流れてしまうものだよ。
「私、何が正しいのかがわからないよ」
結局私は自分で解決しない。できない。しようとしない。
正しいと思ってやってきたことが正しくなくて、だけどやらなかったことが正しいとも思えない。
どちらをやっても結果は一緒ではないのか?
ならば、どうすればいいのだ。
どうすれば、いずく君とあの女性のように、笑い合えるようになるの?
いつだって一人じゃ生きていけなくて、誰かに頼ってばかりで、まるで生魚に寄生するアニサキスだ。
寄生虫。ほんと、そのとおりじゃないか。
「何があった。それがわからないと何もできないだろ」
「わかんない…わからないから辛い」
逃げたことを後悔。してきたことを後悔。
結局後悔だらけの人生。
人生そういうもんだろ?選んだことはすべて後悔で塗り固められている。なんてどこかの本で見た。
作者のように、後悔をそんなに強く受け止められないよ。私は。
「じゃあ話してみろ」
あぁ。ほらそうやって周りは私を甘やかす。
違うな。私が甘やかして欲しいと願っている。
私は自分で人として生きる道を、術を考えれるはずなのに。
「意地悪だ」
ぎゅっと抱きしめられると、また私が私でなくなっていく。
私という器の中は、誰かが選んだ行動でできた私が入っていて、それは決して私ではない。
そんな偽りだらけの私がまた深く根付いていく。
いっそ、こんな偽りだらけの私を殺して欲しい。
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作者名：雪飴 | 作者ホームページ：https://twitter.com/_kz_0
作成日時：2017年7月24日 0時
