結局 ページ25
しかも、お互いとても楽しそうに笑い合っている。
同僚の誕生日プレゼント?私の誕生日にはおめでとうしか言ってくれなかったのに。
そりゃあ私だって、彼が忙しいなか会いにいけないから、おめでとうしか言わなかったけど…でも…。
そんな笑顔、私には全然見せてくれなかったじゃない。
一歩、後ずさると、鏡が私の背中に当たる。
ひんやりとした感覚に、びっくりし、手に握っていたネックレスを適当に置く。
「…違う」
彼が見せてくれないんじゃない。私が見ようとしてないんだ。
見せようと彼にさせてあげてない。
そうだ…。
何が彼のためだ。何が負担だ。
私は結局私のことしか考えてないじゃあないか。
私の身勝手さを彼は我慢してくれている。それに気づかずに、こういう時には都合のいいようにどうして?なんて。
「馬鹿じゃないか…」
ガタッと、鏡が地面に倒れる。
その音に店員さんが私に駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「っ…」
それに返答しようとしても、言葉がでない。
顔を見合わせて、店員さんは私を心配してくれている。
ごめんなさい。でも、今はなぜか言葉がでないの。
その音に、やめてなんていう暇もなく、いずく君と女性はこちらを見た。
あぁ、綺麗な人じゃないか。
鏡で美化されていつも私の目に写っている私自身よりも、メイクをしている姿よりも、何倍も綺麗で、スタイルもよくて、優しそうな人じゃあないか。
結局私は逃げる。
逃げないで、ちゃんと話せばわかることだってあるのに、私は恐れた。
真実をしるのが怖くて、見たくなくて、聞きたくなくて、知りたくなくて。
野次馬を無理やりかき分けて、中心部に出る。
轟さんを無理やり野次馬から引っ張り出し、走る。
ほら、そうだ。
私はいつも一人じゃ何もできなくて、誰かに頼ってばかりで、それでもアドバイスなんかをまともに聞かずに余計なお世話だなんて…。
私、いつからこんな女に成り下がってしまったのだろう。
今更思ったって仕方ないのに。
そう思っても、思ったとしても、結局過去は変わらない。
「おいって!!」
ぐいっと後ろに引っ張られる。
走っていた足は立ち止まり、彼の腕を握っている手だけが後ろに向く。
「聞いてんのか。何があった」
言えない。だって、こんなこと言ったところで、ただ自分が惨めになってしまうだけ。
結局自業自得。
私が生み出した結果で、それは変わらない。
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作者名：雪飴 | 作者ホームページ：https://twitter.com/_kz_0
作成日時：2017年7月24日 0時
