恋焦がれる思いは行き場を探す【緑谷出久】【僕のヒーローアカデミア】 (ページ19)

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半分ページ19

「おねえさんが絶対逃げるだろうから、僕が適当なこと言って引き止めて置いてって言われたの。
　僕も暇じゃないんだけど、だって、向こうはプロヒーローじゃん？
　サインももらったし、まぁ仕方ないかなーって。
　実際、演技っていうよりかはまぁ大体は素だったんだけど、なんだ、周りに迷惑かけんなよ馬鹿カップル」

　少年は私を押しのけると、私の膝から上手に飛び降りた。

「僕は将来あんたらみたいな雑魚じゃねぇ、最強のヒーローになるんだ。
　覚えとけ!!」

「は、はぁ？」

　嵐のように去るとはこういうことなのだろう。

　私たちは唖然とし、その場で数分固まった。

　
＿＿

「要は、いずく君が私の退院時に来たのはお茶子ちゃんの仕業で、結局上手く話がいかないからだろうってことで、逃げ出した私を引き止めるように、あの少年に私を足止めさせたのは轟さんと、そういうわけでいい？」

「はい…」

「あぁ。だけど、まさかあんなませた子供だとは思わなくて…。すまなかったな」

　謝る場所ちがくね？

　なんて思ってしまう。

　でも、私たちってそこまで周りから見て危うのかな？

　別れそうな雰囲気だって、私が誰かに愚痴こぼしたりなんてしてないはずなんだけど。

　無事退院の書類も書き終わり、私たちは、近くのカフェでお茶しながら話す。

　いずく君は仕事を抜け出してきたらしくて、先に帰っていった。

「でもなんで？私たちそんな周りに迷惑かけるほどギクシャクしてないと思うんだけど」

「どこが!?」

「っ!?」

　私はそう言うと、お茶を飲もうとした。

　が、お茶子ちゃんの叫びに、ティーカップに口を付ける寸前で手は止まる。

「だって、二人共最近まともに会って話してなかったんでしょ?しかもメールだって…。
　それってかなりやばいじゃん!」

　なんでお茶子ちゃんがそんなこと知ってるの…。

　いや、私の事務所の連中ならしかねないだろう…。

　後でしっかりと口封じしないといけない。

「やばくないよ…。私たちヒーローなんだし、それが普通じゃない?」

「全然!!私の周りにも付き合っているヒーローいっぱいいるけど、みんな最低一週間に一回は電話やメールしてるよ!」

「う、うん…」

　私たち、断りのメールや電話以外だと話すのは、平均どれぐらいだっけ。一ヶ月に一回?

　私は再度お茶を口に運ぶ。

　轟さんは、なぜか蕎麦を食べている。

　どこから?出前?お昼どきにしたって、ここで食べなくても…。