嬉しさ倍増 ページ15
「もう、かっちゃんてばツンデレ!!」
「はあ!?何してんだテメェ殺すぞ!!いや殺す!!離せブス!!」
ぎゅーと、私の足元に転がっているかっちゃんを抱きしめる。
彼は縄でしばられているせいか、身動きは全然できない。
それが私にとってはなんとも言えぬ嬉しさ。
いつもは彼のいいようにされている私だけど、今は彼より私の地位が上。
この上ない優越感。
「ふふっ、照れてる姿かわいいっ」
「死ね!!死ね死ね死ね!!」
死ねを永遠連呼する彼に、私は耳も貸さない。
私をそんなに思ってくれていたなんて、すっごく嬉しい。
かといって、いずく君が私の本命だから、彼とくっつくことはまずないけれど。
「ね、ねぇ、Aちゃん。ほんとに爆豪くん嫌がって」
「A…、流石に…爆豪がかわいそうだぞ」
「ふふ、しってる。
でもさ、楽しいんだよ」
険悪な雰囲気が、こうやってなくなって、嬉しくて、楽しくて、何気ない日常が凄く大好きだ。
たまには怪我をしてしまうのも、いいかもしれない。
かといって、毎度怪我をして解決することはしないけど。
「ど、ど、ど、どうして、かっちゃんと抱き合って…。
あぁ、そうだよね、僕なんかよりかっちゃんのほうがいいよね。
強いしかっこいいし、ぶつぶつ」
「あ、いずく君…よかった」
「クソデク!こいつなんとかしろ!!」
＿
「無事退院おめでとう」
病院の制服から着慣れた自分の私服に着替え終わった後、痛み止めの薬を飲んでいると、いずく君はそういい、私の病室に入ってきた。
「あれ、ノックした？」
「うん。いないかと思ったよ」
「はは、気付かなかったよ」
ゴクリと水で錠を飲むと、まだふわふわが残っているベッドに座る。
彼も私の隣に座った。
私は足をブラブラさせながらいう。
「どうして？今日仕事じゃないの？」
「今日は…、ちょっと」
ははっ。という彼の顔は、やってはいけないことをしたあとの顔だ。
なんか面白い。
ふふっと笑うと、彼は、え!?という顔で、自分の顔を手で触る。
「ありがとう」
「僕は何もしてないよ…。
無事退院できてよかったね」
「……微妙かな」
「え？」
だって、入院しているときは、彼が暇なときなどいつも会いに来てくれた。
そういうことがこれからなくなってしまうかと思うと、なぜか心苦しい。
喜ばしいことなのに、私の気持ちは複雑。
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作者名：雪飴 | 作者ホームページ：https://twitter.com/_kz_0
作成日時：2017年7月24日 0時
