人殺しの狐様 2 ページ38
「狐様、本日のお供え物です。頂いてください。」
...ふぅ、暗くなる前に置けてよかった。
さて、帰って洗濯物を取り込まないと。
そう思い、振り返ると...。
?「君がいつもおいなりさんを置いてくれてるんだね。」
背の高い浴衣を着た男性が立っていた。
よく見たら狐の耳としっぽが生えている...。
もしかして...!
「き...狐様...!」
こんな好青年が人殺しを...?
いや、それ以前に狐様の姿を見てしまった...!
俺は...殺されちゃうの...?
思わぬ出来事に尻もちをついて震えているとー。
狐「そんなに怖がらないで。大丈夫、君のことは殺さないから。」
「え...?」
姿を見たのに...殺さない...?
これは罠...?
それとも本当...?
狐「...俺はコウタ。ヤブ コウタって言うんだ。」
「や...ヤブ...様...。」
狐「やめてよ。一応この村の神様と呼ばれてるけどさ、そんなに偉くないよ。」
「で、ですが...。」
ヤブ「俺はただ、いつも美味しいおいなりさんをくれる君にお礼を言いたかっただけなんだ。」
「お礼?」
ヤブ「君だけだから、俺にお供え物をくれるのは。それで腹を満たしているんだ。だからいつかお礼を言いたかった。いつも美味しいおいなりさんをありがとう!」
そう言ってから優しく、ふにゃんと笑った。
か、可愛い...。
人を殺してきたとは思えないくらい可愛くて礼儀正しい。
人殺し狐なんて...信じられない。
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作者名:名のない納棺師 | 作成日時:2019年12月4日 20時