014-5 ページ38
「…お前みたいな若い女がそんな気回せるなんてな。さすが有名キャバクラ」
「やめてください。今日が初日の新人です。でも貴方のおかげで結局シャンパンはどちらもいただけることになりました」
「っ、そっか…」
「私、どっちも飲んでみたかったのでチャラ兄さんのトイレのタイミングに感謝です」
ニコッと笑って言えばチャラ兄さんは、ぼそっと呟いた。
「…どっちもは、ダメじゃん」
「え？」
「どっちもなんて…欲張っちゃダメだろ…」
チャラ兄さんは、先ほどと同じように虚な瞳を下に向け、私と視線が合わさることはなかった。この人大丈夫かな？なんかわからないけど何かに怯えているようにビクビクと肩を震わせている。
「あの、チャラ兄さん」
「……」
「よくわかんないですけど、欲張ったっていいんじゃないですか？」
「…は、？」
「欲しいものが1つあるのと、2つあるのとじゃ、2つあるほうが楽しくないですか？」
「な、何言ってんだよ、」
「1つだけでも手に入れば嬉しいけど、2つ手に入った時はもっともっと嬉しいです。手に入るか入らないかは別にして、欲を出して両方欲しいって思うだけなら別によくない？って私は思っちゃうんですけど」
「そう思わないですか？」とチャラ兄さんに聞けば、彼は唇を噛みながら「バカだろお前…」と言った。
「バカでもいいですよ。人生楽しむために、もっと人は欲張りになっていいと思います。誰かを傷つけない欲だったらいいんですよ」
「…初めてだわ、そんなん言うやつ」
「今時流行らないですよ。ニ兎追うものは一兎も得ずだなんて。ニ兎追っといてゲットできた分だけラッキーでいいんです。得られなかったらドンマイまた頑張りましょーですよ」
「お前狂ってんな」
「失礼な！とにかくそういうことなんで、これからはシャンパンの選択肢迫られた時は私のためにも"どっちも"って言っておいてください」
「…お前しか得しねぇじゃん」
「お前じゃないです。Aです」
「…Aね。初めてだ」
「何がですか？」
「キャバ嬢の名前呼んだのも、覚えたのも」
「え、それは嬉しい！」
「…あ、後もう一個初めてあるよ」
「？」
「オレは、一虎…。羽宮一虎ね」
「…え、名前！」
「うん。これも名乗ったのはAが初めて」
どうやら彼の初めてを私はたくさん奪ったようだ。
そして、
「これからはAを指名することにした」
私の初めても、チャラ兄さん…いや、彼…羽宮一虎に奪われた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
knnk99(プロフ) - つのさんさん» ご指摘ありがとうございます(；´Д｀) 間抜けなミスしてしまいました…。嬉しすぎるお言葉もいただき感謝です。これからもお付き合いいただけましたら幸いです(*ﾟ∀ﾟ*) (2021年8月20日 3時) (
レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
つのさん - 9-2千冬が千春になってますよ?この作品好きです！更新楽しみにしてます。 (2021年8月20日 2時) (レス) id: ef4da38789 (このIDを非表示/違反報告)
knnk99(プロフ) - よるさんさん» コメありがとうございます！いい感じに飴と鞭、千冬くんに使い分けていただいて調教してもらいたいですよね…。楽しんでいただけるように頑張ります。これからもよろしくお願いいたします。 (2021年8月19日 21時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
よるさん - 飴と鞭......最高っす (2021年8月19日 16時) (レス) id: 532ad83de5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柴咲華 | 作成日時：2021年8月17日 22時
