011-4 ページ26
ペケにどうしてこんな質問を投げかけたかなんてわからない。ただ聞いてみたくなったんだ。
1人の女を幸せにするどころか、居心地の良さすら与えられなかったオレなんかと一緒にいて幸せだと言うこいつに、ただ聞いてみたかった。
「ほどほどに愛しなさい。長続きをする恋はそういう恋だよ」
「…は？」
「知らない？シェイクスピア。私好きなんだけどさ、この言葉だけは納得いかないんだ」
「…何言って、」
「シェイクスピアは言いました。長い命の恋愛をするためには、ほどほどの愛を持ち注ぐことが大切だって」
「……」
「でもほどほどってなんだろうね。確かに縛り付けたり、束縛で愛を押し付けるっていうのはあまりよろしくないけどさ、どれだけ短くても長続きしなくても、私はほどほどに愛されるなんて嫌だなって思う」
「………」
「全力で愛して欲しいなって思う」
「………」
「千冬くんはさ、ほどほどには愛せない人なんだよ。愛した人の全てを愛して、全身全霊で愛して、これでもかって愛する人に愛を伝えられる人」
「………っ、オレは別に」
「他の人がどうだか知らないけどさ、私はそう言う人の方が好きだし、嬉しいし、幸せだし、そばにいたいって思う」
「………」
「ほどほどじゃなくて、これでもかって愛を送ってくれる人のそばにいたいと思うよ」
「たまたま彼女さんはそう言うタイプじゃなかったんじゃない？」そう言いながらペケは、歳を感じさせない大人っぽい顔をして笑った。
「恋愛感情じゃなくても千冬くんからの愛情、私はたくさんもらってるよ？」
「…そんなんねぇよ…」
「私がそう感じたからいいの！普通いないよ？千冬くんみたいな人。どこの誰かもわからない謎の女に、住む家も、食べるものも、生きるために必要なもの全部与えてくれて…恋愛どうこうじゃなくても、人を思いやる気持ちがなければそんなことはできないと思う」
「…オレはただお前がしつこいから、」
「それでも、私は千冬くんに救われた。命の恩人だし、大好きなご主人様だよ。一緒にいれて楽しいし、嬉しい。安心するし、幸せ」
「今度は、千冬くんの全力の愛情を受け止めてくれる人に出会えるといいね」
オレは下を向いていて顔を上げられなかった。
うっかり顔なんか上げてしまったら、理由なく溢れる涙を見せることになってしまう。
ペケの言葉は、穴が開いて冷え切ってしまったオレの心を、まるで毛布で包み込むかのような暖かい言葉だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
knnk99(プロフ) - つのさんさん» ご指摘ありがとうございます(；´Д｀) 間抜けなミスしてしまいました…。嬉しすぎるお言葉もいただき感謝です。これからもお付き合いいただけましたら幸いです(*ﾟ∀ﾟ*) (2021年8月20日 3時) (
レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
つのさん - 9-2千冬が千春になってますよ?この作品好きです！更新楽しみにしてます。 (2021年8月20日 2時) (レス) id: ef4da38789 (このIDを非表示/違反報告)
knnk99(プロフ) - よるさんさん» コメありがとうございます！いい感じに飴と鞭、千冬くんに使い分けていただいて調教してもらいたいですよね…。楽しんでいただけるように頑張ります。これからもよろしくお願いいたします。 (2021年8月19日 21時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
よるさん - 飴と鞭......最高っす (2021年8月19日 16時) (レス) id: 532ad83de5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柴咲華 | 作成日時：2021年8月17日 22時
