006-1 ページ12
「…マジで言ってる？」
「お前が言い出したことじゃん」
「だって…まさか承諾してもらえるなんて、」
「別にお前が断るって言うならオレはいいんだぞ。じゃ、出ていくか？」
「あー待って待って待って！なる！私、お兄さんのペットになる！！」
自分でも馬鹿げたことを言っているという自覚は十分にあった。こんな女を動物たちに重ね合わせて考えるなんてアホらしすぎる。だけど、
「やったー！！！これからよろしくお願いします！ご主人様！」
両手を高々と挙げながらくるくると回ってからその場に正座をし、立っているオレのちょうど膝上くらいに両手をグーにして置き「わん！」と言う彼女は、やっぱりどこからどう見ても人間で捨て犬とは明らかに違うというのに、オレがいなかったらこいつは…と考えたらかつて飼っていた猫との出会いを思い出させるものがあった。
「とりあえず、オレは仕事に行くからお前は大人しくしてろよ」
「了解です！ご主人様！」
「帰ってきてから、色々とお前をペットにする条件出すからそれまでは部屋の中もうろちょろすんなよ。あ、飲み物とか食べ物は勝手にしていいから」
「あー私のご主人様はなんて優しい人なんだろう。私今人生で一番幸せかもしれない…！」
「大袈裟すぎ。あ、あとそのご主人様ってやめね？むず痒いんだけど」
「え？じゃあなんて呼べばいいの？私お兄さんの名前知らないもん」
そう言われてお互いの名前すらも知らないのに、奇妙な共同生活を送ろうとしていたことに気がついた。
「…千冬。松野千冬だ。」
「千冬様？」
「様つけんな！気持ち悪い！」
「じゃあ千冬くんでいい？」
「…様以外なら何でもいいよ。お前は？お前の名前」
「私は…何にしようかな？」
「は！？お前自分の名前もわかんないの？」
「わかるよ！だけど私はペットだから、あ、千冬くんが名前つけて！」
キラキラした目でそう言うこの女に、「…とりあえず考えとくわ」そう言って玄関に向かった。これ以上こいつと会話をしている時間はない。
「あー！待って待ってー！」と言いながら玄関まで走ってやってくるこいつはもう女ではなく、犬にしか見えなかった。
「行ってらっしゃい！千冬くん」
「……行ってきます」
バタンと閉じられた玄関を見て、誰かに見送られて家を出る久しぶりの感覚に少しだけ頬が緩んだ。
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knnk99(プロフ) - つのさんさん» ご指摘ありがとうございます(；´Д｀) 間抜けなミスしてしまいました…。嬉しすぎるお言葉もいただき感謝です。これからもお付き合いいただけましたら幸いです(*ﾟ∀ﾟ*) (2021年8月20日 3時) (
レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
つのさん - 9-2千冬が千春になってますよ?この作品好きです！更新楽しみにしてます。 (2021年8月20日 2時) (レス) id: ef4da38789 (このIDを非表示/違反報告)
knnk99(プロフ) - よるさんさん» コメありがとうございます！いい感じに飴と鞭、千冬くんに使い分けていただいて調教してもらいたいですよね…。楽しんでいただけるように頑張ります。これからもよろしくお願いいたします。 (2021年8月19日 21時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
よるさん - 飴と鞭......最高っす (2021年8月19日 16時) (レス) id: 532ad83de5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柴咲華 | 作成日時：2021年8月17日 22時
