001-2 ページ2
きっと一虎くんがご飯をあげるために一度ゲージから出していた犬が、迷い込んでここまできてしまったんだろう。すりすりと顔をオレの足にすり付けているその可愛らしい仕草に一瞬でさっきまでの怒りが静まるのがわかる。自分でもわかるくらいに自然に笑みが溢れてその犬を抱き上げた。
「なんだよ、お前。こっちはきちゃダメなんだぞ」
「くぅーん…」
「そっか…。寂しかったのか。早くお前のご主人様見つかるといいな」
「わん！」
「大丈夫だよ。お前は従順だし可愛い。絶対お迎えはもうすぐだから」
「わんわん！」
「…オレがお前たち全員連れて帰れたらいいんだけどな…」
「あ、いたいた」
特技である動物とのお喋りを実行しているとき、一虎くんが犬を探しにやってきた。まだ仕事が残っているため、寂しそうに瞳を揺らした犬の頭を1度撫で、こちらに手を伸ばす一虎くんにそのままバトンタッチをする。
「…千冬がそんな顔して笑ってるの久々に見たな」
「…人をサイボーグかなんかだと思ってたの？」
「そうじゃねーよ。最近はこんな顔して怒ってばっかだったから」
一虎くんはそう言って空いている手を使い自分の目を釣り上げた。要するにいつものオレは目を釣り上げ怒っていると…彼はそう言いたいようだ。
「別に普通だよ！そんな顔してないし」
「…千冬ペット飼わないの？それか新しい女作らないの？」
「…は？」
「千冬は"誰か"とか"何か"のために生きるのが向いてる。前のお前はそうだった。場地のため、タケミっちのため、東卍のため」
「…何が言いたいの」
「…毎日適当に生きてる今のお前を見てるとむず痒いんだよ。ペケJもいなくなって、婚約してた彼女もいなくなって…お前今1人じゃん。大切なもんといつも生きてきたはずのお前が今1人じゃん」
「…っ別に、オレは…」
「ペットでも新しい女でもいいけどさ、"誰か"とか"何か"のために頑張って生きてる方が千冬らしいよ」
「…」
「女はまだ無理だろうから、ペットは？ペットがいれば今よりはマシな生き方できるんじゃね？飼ってみたら？」
お前もそれがいいと思うよなー。そう抱きかかえた犬に言いながら一虎くんは、店へ戻って行った。
…何なんだよ、偉そうに。そう言ってやりたかったけれどその言葉は飲み込んだ。
いいんだよ、これで。大事なもんなんて作ったっていつかは絶対なくなる。その時失って辛い思いをするのは自分だ。だったら初めから大事なもんなんていらない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
knnk99(プロフ) - つのさんさん» ご指摘ありがとうございます(；´Д｀) 間抜けなミスしてしまいました…。嬉しすぎるお言葉もいただき感謝です。これからもお付き合いいただけましたら幸いです(*ﾟ∀ﾟ*) (2021年8月20日 3時) (
レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
つのさん - 9-2千冬が千春になってますよ?この作品好きです！更新楽しみにしてます。 (2021年8月20日 2時) (レス) id: ef4da38789 (このIDを非表示/違反報告)
knnk99(プロフ) - よるさんさん» コメありがとうございます！いい感じに飴と鞭、千冬くんに使い分けていただいて調教してもらいたいですよね…。楽しんでいただけるように頑張ります。これからもよろしくお願いいたします。 (2021年8月19日 21時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
よるさん - 飴と鞭......最高っす (2021年8月19日 16時) (レス) id: 532ad83de5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柴咲華 | 作成日時：2021年8月17日 22時
