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五十八話 ページ11

Aside

 

母さんが死んだ。

遺されていたのは何百万と言うお金。暫く生活するには困らないが、学費もあるしかなり早く尽きるだろう。

ボーッとしていた。何をすると言うわけでもない。やることもなかった。
親戚の無駄な押し付けあいを見るだけ。

見ていて気持ちのいいものでもない。

ヒーローを目指せなくなるかもしれない。その可能性は高い。
それすらもどうでもよくなっていた。

無性に、ヨコハマに行きたくなった。
親戚は私を引き取りたがらない。私は見るからに気持ち悪いから。
火傷の痕がしっかり残っているし。

目も耳も片方ずつ機能していない。

迷惑かけるだろう。
母さん。

逢いたいよ。

話したい。母さんのご飯、食べたかった。一緒に買い物行ってみたかった。
普通の親子になりたかった。

そんな簡単な望みだったのに、叶うことはもうない。

ヒーローになりたいのかも、分からなくなった。

出久が来た。
謝られた。分かっていた。そんなこと。何年一緒にいたと思ってるんだ。

只、許せなかった。

今度は許すことができた。
母さんが死んで落ち着いてやっと回りを見ることが出来たからだと思う。

ヒーローになりたかった頃を出久は思い出させてくれた。確かに、なりたかった。

よく、ヒーローごっこをやって、私が来た!って二人で叫んでた。
カッコいいヒーローに憧れた。

どんなときでも人を救う、オールマイトのようなヒーローに只々憧れ続けた。
そんな想いもいつしか忘れていた。忘れてはならなかったもの。

母さん。

昔の楽しかった頃を思い出す。
母さん。

悲しい。

涙が溢れる。嫌だよ。あんな親戚と家族になれる気がしない。
母さんじゃないと駄目だ。

母さんじゃないと嫌なんだ。

死んでほしくなかった。

やだよ。

私がヒーローになったところを見てほしかった。私が来た!って感じで。

心にぽっかり穴が空いた気がして、どこか空虚になっていて。
何かが足りない。

そんな気がして。誰かどうにかして。助けて。

一番ほしかったもの。

全ての時間をかけて、惜しみもなく捧げて、それでも手に入らなかったもの。

母さん。


愛してくれてたのなら、その言葉を聞きたかった。

愛してるって言ってほしかった。

悲しみにくれる暇はないのに。

ヒーローなんだから。頑張らないといけないのに。何も食べる気もしないし、どうにもならない。

チャイムの音が響いた。

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夢女子S氏(プロフ) - ちょっと、目から塩水が止まんないじゃないですか……神作品をあ"り"か"と"う"こ"さ"い"ま"す"っ"!! (2021年6月27日 16時) (レス) id: 355241a2ce (このIDを非表示/違反報告)
ベル(プロフ) - あれ……目から水が……更新待ってます! (2020年3月2日 11時) (レス) id: efb845659a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - これからも無理せずに頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年1月1日 1時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミナミ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年12月28日 21時

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