tie５４ ページ11
「…ん。」
腕の中で、もぞもぞ動くのを感じて目が覚めた。
「…恭平？起きた？」
そっと腕を緩めて、恭平の顔をのぞく。
『…んぅ。』
寝ぼけているのか、まだ熱でボーッとしているのか。
私の胸元に額を擦り寄せる。
いつもの恭平なら絶対にしない仕草。
目をつぶったままの恭平の。
汗で額に張り付いた前髪をかきあげて。
そのまま手で熱を確かめる。
「熱、だいぶ下がったね。体、どう？苦しい？」
『…だい、じょぶ。』
「ん？」
『だいじょうぶ。』
「そっか、良かった。」
大丈夫という恭平に安心して、ほうっと大きく息を吐いた。
『…一晩中、こうしてくれてたん？』
不安そうな顔。
視線は下げたまま、目が、合わない。
でも、背中の手は、まわったままで。
どうしたらいいのかわからないんだろうな。
可愛いな。
すごく、可愛い。
安心したら。
一気に愛おしさがこみ上げてきた。
「恭平、着替えようか。びしょびしょで気持ち悪いでしょ？」
『…くま。』
くま？？？？
『…くまも、びしょびしょ。…ごめんな。』
一瞬、何のことか分からなかったけど。
恭平の目線の先に気付いて思わず吹き出した。
「ずっと恭平抱っこしてたからねｗ ２人とも汗だくだね。順番にシャワーしようね。」
あ、でも恭平はまだ着替えるだけが良いかな。
そう言ったけど。
『大丈夫。シャワーしたい。』
「じゃあそうしようか。お水飲めそう？」
『…飲める。』
恥ずかしそうにゆっくりと腕を私から外して、起き上がった。
ペットボトルの水が、喉を落ちていくのを眺める。
汗で濡れた髪もシャツもひどく色っぽくて。
病人に対して、なんてことを考えてるのだろう、と申し訳ない気持ちになる。
そんな私の視線に気づいたのか。
『…飲む？…あ、風邪がうつるからあかん…。』
そう言って。
私の真似をするみたいに。
私のおでこの前髪、優しく手のひらでかきわけた。
そうしてそのまま、まだ熱を持った手のひらが、頬まで滑り落ちてきて。
『…うつってへんといいな。』
ってそっと頬をなでた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 288人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ニコラ(プロフ) - きゃー♡ななちゃーん！！まさかこちらのお話まで読んでもらえるなんて！低評価にはだいぶ鍛えられたはずなのに、全然凹んでて自分でもびっくり。書きたいもの書いてるだけだから、気にしなければ良いのはわかっているのだけどな。ななちゃんありがとう♡ (2023年1月11日 0時) (
レス) id: 08c983b77b (このIDを非表示/違反報告)
∞やすばのなな∞(プロフ) - 過去作品まで？許せぬ(怒)ニコラちゃんのお話は全部素敵よ。大好きで何回も読みなおすくらい。このお話も遅れ遅れだけど読んでるからねー (2023年1月5日 7時) (レス) @page45 id: 1ab47d4d40 (このIDを非表示/違反報告)
ニコラ(プロフ) - てさん» てさんはじめまして☆えー、もうめちゃめちゃ嬉しい(;_;)恭平担の皆さまと、一生かわいいかわいい言っていたいですｗ これからもお楽しみ頂けますように！ (2022年12月23日 10時) (レス) id: 08c983b77b (このIDを非表示/違反報告)
ニコラ(プロフ) - さりさん» さりさんこんにちは☆一気読みなんて嬉しい！！そんな声を貰えるとちょっと書く手が軽くなりますーー☆嬉しいです！ありがとうございます(*^^*) (2022年12月23日 10時) (レス) id: 08c983b77b (このIDを非表示/違反報告)
ニコラ(プロフ) - はるかさん» はるかさんこんにちは☆まさかの大倉くんも楽しんでもらえてるとはeighterの私としてはとても嬉しいです！ヒモ味…いいですよねえ(｡>﹏<｡) (2022年12月23日 10時) (レス) id: 08c983b77b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ニコラ
| 作成日時：2022年12月1日 15時
