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入校生全員に割り当てられている寮の部屋に戻り、ベッドに身を投げてカバンから原稿を取り出す。
【嘘と消失点】
このタイトルにセンスがあるのかどうか、俺にはイマイチよく分からない。
今から読めば明後日には間に合うか。パラパラと捲った感じざっと400ページ。あいつが書く小説にしては少なめだなと思うのは、俺の感覚が麻痺って来ているのかもしれない。
「陣平ちゃああああん!!!!」
「うるせぇ黙れぶっ殺すぞ」
「入った瞬間悪口のオンパレード?!?」
勢いよく部屋の扉を開け放ったかと思えば、やいやい叫んで「じゃなくて!」と仕切り直す萩原。
奴は手にしていた携帯の液晶を俺に見せると「姉さんが入院したこと俺今の今まで知らなかったんだけど?!」とキレ出す。画面のメールの送り主はもう一人の姉、萩原千速。
だから言ったんだよ。後からバレたら余計うるせーって。
こいつの過保護は今に始まったことではない。シスコンではなく、過保護。
抜けに抜けまくっている天然、最早間抜けと言っていい姉を持った萩原は、昔から何かと「姉さん!」と叫んでいた。よく病室から脱走を図って裸足で中庭を駆け回っていたあいつを捕獲してくるのもこいつだった。
お前ほんとに弟か?どっちかっつうとあっちだろ、妹は。
「なんで教えてくれなかったんだよ?!?」
「お前の姉さんが「研ちゃんには黙ってて!」って言うもんでな」
「この姉さんベタ惚れ魔神!!!」
「言ってろ、彼女好き好き野郎」
はんっ、と怒り心頭な様子の萩原を鼻で笑い、中断していた読書を再開する。
普段滅多にかけない眼鏡をかけて活字と睨めっこしていれば、すぐ横のベッドに萩原がダイブしてきて、気づけばAの原稿を二人して読んでいた。
シーツの上に頬杖をついて、いつものペースで紙を捲る。
一枚、二枚、三枚…………暫く小説の内容に没頭していたが、ふと途中から萩原が手元を覗き込んで来なくなったなと思い、気になって顔をあげる。奴は隣で俺がよけていった紙の方を読んでいた。
「おい萩原、読まねぇのかよ」
「自分のペース見て言ってる???俺陣平ちゃんが読み終わったの読むので手一杯だよ」
言われてみれば萩原とは既に十ページ以上の差があった。読むスピードはそんなに早い方ではない、と思っていたが、高校からの強制読書週間で無意識のうちに成長していたらしい。
___結局それから明け方近くまで読み込んでしまい、堂々と開き直って朝礼に遅刻していった俺達が鬼公にどやされたのは、また別の話だ。
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ミルクティー - 萩原&降谷妹の小説から飛んできました!すごく面白いです!!めっちゃ失礼かもしれないですが、景光の気になる人が喫茶店のオーナーだって知った瞬間に叫びました笑 更新頑張ってください! (2022年5月22日 10時) (レス) @page11 id: ae52256784 (このIDを非表示/違反報告)
音美 - …尊死しました、あのね、ガチで一瞬気絶しちゃったんですよ、この作品僕を殺しにかかってるんでは無いですか??? (2022年5月9日 23時) (レス) @page11 id: aed0770e75 (このIDを非表示/違反報告)
Topaz トパーズ - 更新楽しみにしてまってます!!! (2021年11月2日 5時) (レス) @page9 id: 09b28cb614 (このIDを非表示/違反報告)
颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - ぜっっっったいあると思いましたwwww初コメ失礼します!続き楽しみに待ってますね (2021年9月3日 21時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2021年9月3日 15時