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昨日は憎めないとかなんとかほざいたが、あれは嘘だ。一日で撤回するなんて、とかなんとか言われたとしても俺は前言を撤回する。あの野郎は一生恨む。
何が駅前のプリン買ってきてねてへぺろだ。コンビニのプリン買ってこいのノリで一時間待ちのプリンをねだるな。しかも客のほとんどが女じゃねぇか。グラサン掛けてボッチで並ぶ気まずさ考えたことあんのかよ。ねぇんだろうなクソ。
やっとの思いで手に入れたプリン入りの小洒落た紙袋を持ち上げ、はぁ、と盛大にため息を吐く。
……一番憎むべきなのはあいつに甘い俺だわ。次はなんと言われようがコンビニのプリンだ。異論は唱えた瞬間殴る。
「302号室……ここか」
昨日あれから何回か続いたやり取りの中で聞き出した病室の番号を口にする。扉の横には【萩原 A】と書かれた見慣れた表札。
音を立てず扉を開けて中を覗くと、丁度検査を行っている最中だったようで、Aの居るベッドの脇に立っていた看護師がすぐさま俺に気づいた。そして「Aさん、今回も陣平くん来てくれましたよ」と俺に気づいていないAに伝える。
Aの見舞いをしているうちに、いつの間にか俺まで病院の人間に顔を覚えられてしまった。
ただ困ったことに、ここでの俺の共通認識は全員【陣平くん】だ。どこぞのバカが松田陣平と名乗る前に俺を【陣平くん】で押し通したのだ。
お陰で「松田です」と訂正を入れても、返ってくるのはいつも「陣平くんもどうぞ座ってください」。22にもなって身内以外に【陣平くん】呼びされる俺の気持ちが分かるか。死にてぇよ。
「あ、陣平くんだー」
「……いい加減その呼び方やめろ」
「可愛いからやだ」
「……お前じゃなきゃぜってぇ殴ってる」
検査をしていた看護師と入れ替わるようにして病室に入り、左奥のベッドに座るAの元に歩み寄る。
こいつは文面でこそキャピキャピしているが、実際はふわふわした口調でゆったりと喋る。幼少期はよくAの読み聞かせで寝ていた萩原曰く「あれは睡眠導入剤」らしい。否定はしない。
入院している割には元気そうなAに洒落たロゴの入った紙袋を差し出せば、途端に眠そうな瞳がキラキラと輝き始める。「ほんとに買ってきてくれるなんて思わなかった」って、なら頼むな。俺の労力を返しやがれ。
「人のお金で食べるプリンは美味しいねー。陣平くんもいっぱい食べてね」
「買ったの俺なんだわ」
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ミルクティー - 萩原&降谷妹の小説から飛んできました!すごく面白いです!!めっちゃ失礼かもしれないですが、景光の気になる人が喫茶店のオーナーだって知った瞬間に叫びました笑 更新頑張ってください! (2022年5月22日 10時) (レス) @page11 id: ae52256784 (このIDを非表示/違反報告)
音美 - …尊死しました、あのね、ガチで一瞬気絶しちゃったんですよ、この作品僕を殺しにかかってるんでは無いですか??? (2022年5月9日 23時) (レス) @page11 id: aed0770e75 (このIDを非表示/違反報告)
Topaz トパーズ - 更新楽しみにしてまってます!!! (2021年11月2日 5時) (レス) @page9 id: 09b28cb614 (このIDを非表示/違反報告)
颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - ぜっっっったいあると思いましたwwww初コメ失礼します!続き楽しみに待ってますね (2021年9月3日 21時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2021年9月3日 15時