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______萩原の葬式を境に、ゼロと諸伏は二人仲良く音信不通となった。
あのタフな班長ですら萩原の死と同期二人の音信不通には相当堪えているのか、最近はやたらと俺に安否確認をしてくることが多い。んな確認せずとも生きてるわ。先週も飲みに行っただろうが。
ったく……と半ば呆れながらも、安否確認のメールで返信をしなければ、それこそ大事になる未来が目に見える。仕方なくポチポチと簡潔に「生存」と文字を打ち返し、俺はパタリと携帯を閉じた。
ふと部署の壁にかけられたカレンダーに目をやって、目を伏せる。あと二週間ほどで、あいつらの死から丁度四年が経つ。
今年こそは、あいつらの仇を討たなければならない。
ゼロの為にも……あの人の為にも。
「___よしましょうや警部さん。田舎から出てきた転校生じゃねぇんだから」
あれから一週間後。本来ならば特殊犯罪係に配属されていたはずが、俺は上から妙な気を遣われたせいで、気づけば強行犯係に配属されていた。その事に周囲の反感の目を見渡しながら、サングラスの向こう側で苛立ちを募らせる。
だがこの異動が俺にとって吉だったと知るのは、まだもう少し先のことだ。
強行犯係に配属されて六日。面倒臭い聞き込み作業も終わり、警部から直々に俺の教育係となった佐藤という女の運転で警視庁に向かう。
その間なにやら「あんな聞き込みじゃダメだ」的なことを言われていた気もするが、生憎エンジン音がデカすぎたもんで。残念だったな。なんて口には出さず煽りながらひたすらにメールを打ち込む。
「あら、メール?早いわね」
「あぁ。人より指先が器用なもんでね」
「……もしかして彼女かしら?」
「まぁそっちも居ねぇことはないが、今回はダチとその彼女に書いてんだ。送信しても一切受け取ってくれねぇ、大切な奴らに。……結婚式には必ず呼ぶって、言ってくれたんだけどな。なんの準備も出来ねぇまま、二人揃って旅立っちまった」
え?と驚きの声をあげる佐藤には何も言わず、送信ボタンを押し込む。そして画面に表示されるのは、代わり映えのない【送信できませんでした】の文字。
この瞬間が一番虚しく感じることなど、あいつらは露ほども知らないのだろう。
「陣平ちゃーん!早く来いよー!」
「まつらくっ!」
目を瞑れば、四年がたった今でも、鮮明にあいつらの声が蘇る。けど悪いな、二人とも。
______俺はまだ、そっちには行けそうにないんだ。
【END】
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ひなみ - 読み終わった後、偶然、コナンのEDにもなった「ジューンブライド〜あなたしか見えない〜」を聴いたんですが、この曲の歌詞が妙にこの作品に合っている気がして、またこの作品を思い出して泣いてしまいました。心に残る素敵な作品をありがとうございました。 (2022年10月16日 17時) (レス) id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - 読み終わった今も涙が止まりません…。まず二人が助からないと分かったところで大号泣、夢主が既に亡くなっていたと分かったところで大号泣、最後の写真で大号泣…。ずっとギャグだったから、こんな結末全く予測していませんでした…。 (2022年10月16日 15時) (レス) @page49 id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 最後のイラストで涙が止まらなくなりました😭 (2022年6月23日 22時) (レス) id: 1cfa02e0c5 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まさかの結末で涙が止まらない、、、 (2022年6月14日 19時) (レス) @page48 id: 2eb7e133f7 (このIDを非表示/違反報告)
milk - なにこれ、悲し過ぎない!もうtシャツの袖がびしょ濡れになりました (2022年5月26日 0時) (レス) id: b9832e8e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2021年7月25日 15時