彼女に紹介されたお兄さんが同期だった場合の対処法【萩原研二】

□ ページ46

．







「っ……ここか」







途中躓きながらも駆け上がった先では、明らかにこれ以上は進めない場所があった。恐らく爆風による二次被害。ということは、まだ辛うじて扉は生きているここが、あいつらの居る階。

急いで扉に手をかけるが、レバーがガチャガチャと動くだけで、全く動く気配がない。よく見ると扉には隙間があり、上の階が崩れたことによる重みで扉が歪んだであろうことが推測出来た。

だが……これくらいの扉なら、何度か体当たりすれば望みはある。こうなるとプロテクターがあった方が体への負荷は少なそうな気もするが、今更取りに戻るのも馬鹿らしい。



この先にあいつらが居るかもしんねぇんだ。
今更、止まれるわけねぇだろ。








＿＿＿バゴン！








俺の予想通り、既に開きかけていた扉は、数回ほど体当たりをすれば容易く動いた。元々蝶番が脆くなっていたようで、後は扉ごと蹴り倒せば、目の前にはあまりにも非現実的な光景が広がるのみ。


普通に人が行き来していた廊下には、無惨な程に積み重なった瓦礫の山。
爆弾の設置場所だったであろう場所は、天井が突き抜けて上の階の様子さえ見える。
所々血が垂れているのは、解体にあたった機動隊員のものか。


軽く辺りの状況を確認して、俺はすぐに目当ての人物達を発見する。彼らは非常階段のすぐ横に座り込んでおり、今まさに動き出しそうだと錯覚してしまうほど、綺麗な状態だった。







「おい、萩原！！萩原！！！返事しろ！！おい！！降谷……っ！！！」







目を背けたくなるほどボロボロの状態の萩原と、そんな萩原に抱えられている降谷の肩を掴んで、咄嗟に手を離す。


……なんで、なんでお前ら二人して、んな冷たいんだよ。


もう一度冷静になって彼らの腕に触れれば、とっくに脈は無かった。降谷の場合は既に死後硬直も始まっており、まだ若干温もりがある点から、萩原は死後間もない。

あぁ、そうか。俺がもう少し早ければ、萩原だけは間に合ってたかもしれないとかいう、そういう系な。なんだよ、お前のくせに、結構痛い現実突きつけてくんじゃん。ほんと、うぜぇわ、お前。







「……最期まで、かっこよく死んでんじゃねぇよ、萩……」







お前はその怪我で、彼女抱えてここまで歩いてきたんだろ。もう既に死んでる彼女相手でも、最期まで諦めず抱え続けたんだろ。なぁほんとさ、なんなんだよ、お前。

最期まで彼女を守ろうとしたお前を、俺は、どう責めろって言うんだよ。
死んじまったお前を、俺はどう殴れって言うんだよ。なぁ。



……答えろよ、萩原。







．

□→←□

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す